み ず か
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庭には夢が埋まってる
パフェもピンクも選べない  [5/9]


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「そんなに気にすることないって。本人に聞かれた訳じゃないんだし」

 絢はそう言うと、静かに微笑みながら「あ、これ清花に似合うよ」と深い海の色のような青いワンピースを私にあてがった。
膝に触れるか触れないかの丈で、ウエストより少し高い位置にココア色でベルベット地のリボンがあしらってある。

 あの後、あまりにも肩を落とした私を元気付けるためと言って、絢に手を引かれて連れて来られたのがこの店だった。
彼女が普段持ち歩いているようなキラキラした小物や、私には絶対似合わないだろう可愛らしくてひらひらした洋服が店内に溢れている。
それどころか、店員や私以外の客までもが、まるでその売り物のように、店内に馴染んでキラキラしていた。

「でもあの人の言う通りじゃん。私、ホント最低だ」

 落とした視線の先に、先っぽの白い部分が汚れて茶色くなった黒いスニーカーと、大きな蝶のモチーフが付いた空色のサンダルが映った。
足元までこんなに差がつくものなのか。
胸の奥のもやもやを流し出すように、深く息を吐いた。

「大丈夫、清花は反省してるもん。逆ギレして言い返したりもしなかったし。それだけで十分だよ」
「そうかなぁ」
「そうだよ」

 顔を上げると、絢の屈託のない笑顔があった。

「ねぇ、清花、好きなの選んで?」
「え?」
「どれでもいいから、好きなの選んで。アヤがプレゼントする」
「誰に?」
「清花に決まってるじゃん」

 思わず「はぁ?」と聞き返したが、彼女は相変わらず笑顔のまま、

「バイト代もらったばっかだから、プレゼントしたくなったの」

と言って、さっきの青いワンピースを「これどう?」ともう一度私にあてがった。
よほどのおすすめ品らしい。

「そんな、もらえないよ」

 私はワンピースを静かに押しのけ、そっぽを向いた。
商品の棚の上に整然と並ぶバラをかたどった鏡に、陰った自分の顔が映る。
その形にもピンク色の縁にも、私の表情はあまりにも不釣合いだった。

 似合わない、その前にもらえない。
絢が私を気遣ってくれているのはわかったけれど、そんな物をもらったからって私の気分は軽くならない。
何だか「これで元気になるでしょ」と小馬鹿にされているような気さえした。

 ところが絢は、そんな私の言葉をまるで聞いていないかのように、「あ、これも似合いそう」と違う服を選び出す。

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