み ず か
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庭には夢が埋まってる
パフェもピンクも選べない  [4/9]

「とにかく、私は嫌なの。軽そうなところも、ちゃらちゃらしたところも、大っ嫌い。何にも考えてないみたいで、見てるとすっごいイライラすんの」

 むきになっているだけだ。
本当は直接話してもイライラなんかしなかったし、あの笑顔にはむしろ好感さえ抱いた。

 いきなり「大嫌い」と言われたのに、彼は全く私を責めなかった。
悲しそうではあったけれど、そんな私を拒否する姿勢も見せなかった。

 そう考えると、「みんな」の意見は正しいのかもしれない。
もっとも、相手をよく知りもしないで勝手に目の敵にしていただけなのだから、それも当然のことなのかもしれなかった。

 それでも私は絢の言葉に過剰反応していて、心の中が煮込みすぎたカレーの具みたいにぐちゃぐちゃになってしまっていた。
彼女はそんな私を、困ったように眉を八の字にして見つめている。

 自分のつまらない意地に後悔したのは、そのすぐ後だ。

「よく知りもしないくせに他人のことボロクソに言うあんたの方が、よっぽど見ててイライラするよ」

 落ち着いた、でもどことなく苛立ちの混じった声だった。
私たちが驚いて振り向くと、両手にグラスを持った私服の男の人が少し離れた場所に立っていた。

 同年代の男子よりも大人っぽくて、体つきもしっかりしているから、たぶん大学生だろう。
彼は切れ長の瞳でぐっと私を睨みつけ、短く息を吐いた。

「外見でしか人のこと判断できないなんて、器の小さい女だな」

 彼はそれからくるりと背を向け、騒がしい店内を奥へ奥へと進んでいった。

 呆然と立ち尽くしたまま、私は彼の姿が奥の部屋へ消えていくのを見送った。
頭の中にはまだ、彼の曇りのない言葉が響いている。

 見ず知らずの人にそんなことを言われてしまうなんて、それほど私はとんでもないことを言っていたのだ。
ふと須藤英知の無邪気な笑顔が浮かび、喉の奥がぐっと苦しくなった。

「やっばい、すごいイケメン!」

 絢がそう話の腰を折ってくれなければ、その場で泣いてしまっていたかもしれない。


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