▼ ハッピーバレンタイン!
『邑輝先生!』
私は息を切らしながら邑輝先生の居る部屋に押しかけた。
「おや、名字さん。どうしたんですか?」
走ってきた私に目もくれなかった。とりあえず走ってきた理由は聞いてくれた。
『邑輝先生!はい、ありがとうの気持ちです。』
そう言って邑輝先生にピンクのリボンでラッピングした袋を渡した。
「?何故です?」
『…え?何故ですって…ありがとうの気持ちですって言いましたけど。』
こちらに向き、変な事を聞いてきた。
「そうですか…」
『なんか変ですよ?』
手を顎にあて考えごとをしている…ように見える。というか、私的には早く袋を開けてもらいたい。
『もう、早く食べてみて下さいよ』
「ああ、そうですね。中身は何が?」
興味を示してくれた。中身はクッキーだ。チョコなんて固めたやつぐらいしか作れない私が頑張ってクッキーぐらいはと思って全力を尽くしたお菓子だ。
『クッキーですよ。』
「ほぅ…あの名字さんが」
『あのってなんですか』
冗談ですよと言って邑輝先生が袋をあける。クッキーを一つとり口の中に入れた。その一つ一つの動作がやけに色っぽく見えた。
「美味しいですよ。名字さんにしては」
『ちょっとさっきから嫌みばっかですよ。』
一つ食べ終えた邑輝先生がこちらを見た。
「さて、バレンタインのクッキーも貰いましたし、お礼は何がいいですか?」
『!今日バレンタインって気づいてたんですか…』
もちろんですよと邑輝先生。
さてお礼…
「今出来るものにして下さいね」
『え。今―ですか?』
今出来るもの?そしたら色々と絞られていく。しかしやっぱりそう簡単にはいかないもので。
『邑輝先生がくれるものなら何でも。』
本当に何でもいい。やっぱりこの人とは長くいたからだろうか。そう思えるようになっていた。
「そうですか」
ふむ、と微笑みながらこっちに近づいてくる。
ヤバい、アレは危ない笑顔だ。
「ならこんなことでもいいですよね」
ああもうどうにでもなれ。
――――
何だこれ…バレンタインあんま関係ない。
クールなヒロインちゃんですなー。ツンデレとかにしたかったけど力つきた…
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