追いかけ追い抜き振り向いて、
少し戻って抱き締めて〜中編〜
(切→甘/血)



の続き






それからしばらくして
市丸の元に現世で虚が暴れ隊員が負傷しているとの報告が届いた

「現世にいっとる隊員…っ姫」

市丸は救援部隊と共にすぐに現世へ向かった



─自分がもっと大きければ、強ければ 愛する彼女を抱きしめ、護れるのに

いつかの思いが胸をよぎった


現世に着き虚の気配の方へ向かうと血塗れの隊員達の姿
ほとんどの隊員が倒れている
斬魄刀を握り立っている隊員は僅か2人
どちらもかなりの重症らしいのは見てとれた
その内の1人が姫だった

救援に来た市丸達により虚は倒された

負傷し倒れた隊員達はすぐに搬送された


市丸は離れた所にいた姫に近付いた

ちらりとこちらを見た姫はふわりと笑いぐらりと傾いた
すかさず彼女を抱き留めた市丸

「っ姫…しっかりしいや」

『いちま…たいちょ…』

顔色が悪く、出血も多い息しているのがやっとな状況だった

市丸は姫を抱き抱え尸魂界へ向かった


道中、息も絶え絶えな姫が口を開いた

『いち、ま…た、いちょ…』

口からは血が伝っている

「姫、喋ったらあかん」

『あの、ね…』

市丸の制止すら聞かず喋り続ける姫

『ほん、とは…っ…ちょっ…死んじゃ、い…っかったの』

「…っ何言うてんの…帰ってきたら出掛けよ言うたやんか」

─死んじゃいたかったの
その一言に胸を締め付けられた
一体何が彼女を追い詰めていたのか…

『だっ…も、とお、くて……いち、ま、どの…と…くて…さみ、し……』

─市丸殿
昔姫が彼を呼んでいた呼び方だった

「ボクが遠い…?何言うてんの ボクはずっと傍におったよって寂しいことあらへんやん」

『…も、たち、ば…ちが…っ…』

─あぁせやったんか ボクは阿呆や、遠いっちゅうんは身体の距離やのうてキモチやったやな

市丸が隊長になってからも市丸は姫に声をかけたりはしていた
しかしまもう幼かったあの頃とは違うのだ

隊長という立場が離した姫と市丸のココロの距離─

それはたしかに大きく深い溝となって姫の前に横たわっていたのだ
市丸はただ唇を噛んだ

『いちま…ど、の…』

「姫、もう喋ったらあかん」

『だいす、き…で、した……』

涙と共に零れた言葉
まるでこれが最期みたいに─


尸魂界に着き四番隊救護詰所へ駆け込んだ

─自分がもっと大きければ、強ければ 大好きな姫を抱きしめ、護れるのに

上を目指した彼

─だっ…も、とお、くて……いち、ま、どの…と…くて…さみ、し……

反比例したココロの距離

今はただ、姫の無事を祈った




へ続く


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