追いかけ追い抜き振り向いて、
少し戻って抱き締めて〜後編〜
(切→甘/血)
※2の続き
数日後、四番隊救護詰所には姫の姿があった
姫は懸命な処置により一命をとりとめたのだ
─コンコン
個室にノックの音が響く
『はい…』
返信をすれば
四番隊隊員が顔を覗かせた
面会の方がいらしています─
聞き終わる前に体に衝撃が届いた
その衝撃の理由は
「姫…っ」
『市丸隊長…』
市丸が抱き着いてきいたからだ─
四番隊隊員は多少慌てていたが
安静にお願いします
とだけ告げて退室していった
ぎゅっと抱き着いたままの市丸
さすがに傷に障ったのか
『市丸隊長、苦しいんですけど…』
と、市丸に訴える姫
しかし─
「ごめんな、もう不安にさせん…離さへんから」
『いや、だから離せってば』
─ゴンッ
市丸の頭にゲンコツがヒットした
「いっ…つう〜」
『い、市丸隊長が離さないからですよ!』
殴ってしまったことを多少反省し慌てつつも、やっぱり市丸のせいだとそっぽを向く姫
市丸はふっと思った
昔に戻ったみたいだと
昔も隊員に悪戯をしたらゲンコツが降ってきた
いつからだっただろうか
ゲンコツが降らなくなったのは
しっかりとは分からないが恐らく市丸の昇進に比例する様にゲンコツの回数は減っていっていただろう
「…なぁ姫、覚えとる?帰ってきたら出掛けよ言うたの」
市丸は唐突に姫に話題をふった
『え…あの…えっと…』
彼は姫が戸惑う理由に先日の事件で気付いた
だからこそ戸惑う彼女に彼は告げる
「立場が違うやらなんやらあるみたいやけど、そないなもん関係あらへん。ボクはボクで姫は姫や」
その言葉は姫の中の考え方を変えるには充分過ぎる言葉だった
『市丸隊長…』
─ボクはボクで姫は姫立場なんて関係ない
ココロの中にあった暗く重い鉛が無くなっていく様だった
「っちゅうわけで退院したら出掛けよな」
いつも以上に口角を上げて言った市丸に
『…はいっ!』
姫も弾ける様な笑顔で返事をした
昔とまるっきり同じでなくていい
ただ、立場など深く考えていなかったあの頃の様に一緒にいられれば、それでいい
そう思えたんだ
いつの日か少年は思った
自分がもっと大きければ、強ければ 愛する彼女を抱きしめ、護れるのに…と
─追いかけた彼女の背中
その結果、
広がってしまったココロの距離
─追い抜いて見えなくなっていた彼女のココロ
しかし、離れてしまったことに気付いたなら、戻ればいい
もう一度、近付けばいい
─振り向いて
愛しい君の手をとって
─少し戻って
確かにあの頃とは何もかも違うけど、ボクは今もここにいるよ と
─もう見失わない様に
そっと告げて
─もう離れない様に
君と新しい明日を見るよ
─抱きしめて
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2010年の年越しに…
ということで書きました
読み返してみると
なかなか酷い文だ…www←
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