◎ 2話
蝉が絶え間なく鳴く暑い暑い夏真っ只中
爆豪は夏が好きだ
個性の本領発揮が出来る季節なのがでかい
あのダメな大人がいると分かっていても帰路を変えないのは何故だろう
ほらまた、いつもの非常階段で暑さに項垂れているナマエを見つけた
「ッ!テメッ!なんちゅー格好しとんじゃ!」
「ん?おー勝己くん」
何かを入れていたであろうクリアファイルを手に持ち仰ぎながら爆豪の怒号により視線を移すナマエ
ズカズカと近くによるといつも2つほどしか空いていないボタンが更に多く開けられ制服のベストもボタン全開で気崩しなんてレベルじゃない
捲し上げられたスカートから覗く白い足と座り込むナマエを見下げる爆豪からは開いたシャツの胸元から白い下着が見えていた
爆豪は高校生だ、所謂思春期真っ只中
大事そうなので2度言うが思春期真っ只中である
「ちゃんと服着やがれ!」
「もー、暑いのにそんなに怒鳴らないでよー...あ、もしかしてブラ見えてた?」
「...言っとくがわざとじゃねェからな」
「良かったー!今日可愛いの付けてきてて」
「...は?」
「ちゃんと、見たい?」
ナマエはいつものニヤニヤとした顔で煽る様に胸元のシャツの襟を持ち上げてみた
そこから垂れる汗、その雫が女性特有の谷間に吸い込まれていくように流れる
喉元が、ごくりと音を鳴らした気がした
「なーんてね!固まっちゃって可愛いー、からかい過ぎた?」
パッと離れてあっけらかんと言うナマエ
分かっていた、どうせこんな落ちだろうと、だが青春男児を舐めてはいけない
いつもの様に頬をつつこうとしたナマエ手を掴みあげ、座っているナマエの臀部の真横にガッと音を立てて片足を乗せ覆い被さるように覗き込む
「...あんま舐めんじゃねェぞ」
その赤い目はきっと熱を帯びた雄の目をしていただろう
顔が暑いのは夏のせい
決して目の前のだらしない大人の煽りに負けた訳でない
苦し紛れの言い訳を心の中でしておく
「顔、赤いよ勝己くん」
「...ッチ」
爆豪が理性の限界を抑えて睨みつけてやってもナマエは掴まれている腕を振りほどこうともせずいつもの調子で話しかける
そうなればこちらの方が分が悪い
掴んでいた細い手首を離す
「その格好はぜってぇやめろ」
捨て台詞を吐いてじゃあな、またな、なんて言葉も口にせずに家に帰る
遠のいて行く爆豪の背を見つめナマエは青春だなー、なんて呑気に空を仰いだ
あと念の為ボタンは掛けておいた
prev|
next