◎ 3話
「うぇーん、勝己くん勝己くん待ってー!」
ここ数日見ないな、と思っていた帰り道数日ぶりに爆豪はナマエの顔を見た
しかも偶然非常階段の扉を開けた時に前の道を通っており爆豪を見つけた瞬間ナマエはべそを書きながら駆け足で階段を降りてくる
鈍臭いのか残り数段のところでナマエは足を滑らせて階段を踏み外した
爆豪は反射的に小さな爆破でナマエの元へ滑り込んで頭をぶつけないよう抱えるようにしてギリギリの所でキャッチした
「...びっくりしたー...ありがとね勝己くん」
「っとに、鈍臭せぇ!」
助けれるし助ける自信はあったがヒヤッとした
「...で、いつまで抱きついとんだ」
「んー?ちょっと聞いてくれる?」
ナマエは抱き止めるように助けられた拍子にかこつかけて爆豪の腰に腕を回しお腹辺りにグリグリと頭を擦り付けて来る
こんなの誰かに見られたら絶対に勘違いされるレベルだ
爆豪の心配を他所にナマエは喋り続ける
「この前ドジってサボってるの上司にバレたのー...そしたらさぁ、めちゃくちゃ怒られるし監視役?みたいなの付けられてここ数日サボれなかったんだぁ」
「ハッ!やっと天罰が下ったか!」
ザマァ!と笑ってやった
寧ろよく今まで隠し通せていたなこの女、とも思ったのと同時にここ最近見なかったのはその監視役とやらが着いたからか、と合点がいく
「勝己くんひどーい、労わってよぉ」
「社会人だろが、真面目に働けや」
「私は真面目にサボってるもん」
「ふざけてんのかテメェ」
もし自分にこんな女が部下に来たら100%クビにする100%だ
話しながらも未だ抱きついて離れないナマエに今更ながらハッとした
「いい加減離れろや」
「えぇー、勝己くんあったかいし、なんか筋肉もちゃんとついてて男の子って感じでやめれなーい、やめなきゃダメ?」
この自分より年上の社会人は一体何をほざいているのか
すぐに突っぱねればこんな非力な女、すぐに退かすことが出来るのにそうさせない何かがある
上目遣いでダメ?なんて聞いてくるもんだから心臓に悪い
このダメな大人は酷く少年の調子をかき乱す
「あ、否定しないんだ」
「...ッ!退けッ」
てっきりすぐに離れろーってタイプだと思っていたナマエは少しキョトンとして爆豪を見上げるとその言葉に反応してすぐ爆豪はナマエの肩を押して自分の腹の上から引き剥がす
「私はもうちょっと抱きついてたかったけど、場所、考えないとね」
ニッコリと笑ってナマエが言うものだから爆豪は今度は直ぐに「場所の問題じゃねぇ!」とつっこむことが出来た
もし自分がこの女の上司だったらクビにする確率は99%だ、と1%だけ下げておく
なんとなく、本当になんとなく本当にナマエが爆豪の部下ならなんて考えてしまった
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