シリーズ | ナノ

 1話




「やぁ少年、また会ったね」

「またテメェか!クソサボり魔!」

「相も変わらず口が悪いなぁ、君は。本当にヒーロー志望?」

ビルの非常階段に座り込みどこかの会社員であろう制服に身を包んだどこか妖艶的な女性ナマエはヒーローを多く排出する名門雄英高校の生徒である爆豪勝己に今日も今日とて語りかける

「あったりめェだわ!トップヒーローになる男だわクソ!んでそのねっちょりしてる喋り方やめろや!腹立つ!」

「えぇー、喋り方注意されてもなぁ。生まれつきだし?」


爆豪勝己とナマエは真反対の性格の2人、相容れぬ2人
爆豪が知る限りナマエは明らかに仕事勤務時間であろう時間でも関わらずこうしていつも非常階段で仕事をサボっている

爆豪にとってこんな大人にはなりたくないランキング堂々の1位だ

「ところでさ、今度ドーナツ屋さんの新作出るの。勝己くんもいる?」

「いらねぇわ!クソ!」

「あっもしかして甘いもの苦手?辛いのが好きそー」

当たりが故に押し黙る
押し黙った爆豪を見てナマエはニヤリと口角を上げる

「ははーん、大当たりだ。わっかりやすーい!可愛いねぇ」

「ダッレッガ!可愛いだ!嬉しくねぇ!」

「ツンケンしちゃって青春ー!」

この女は何を言ってものらりくらりと交わして余裕を見せる
サボり魔のくせに、と余計にそれが腹が立つ

つんつん、と爆豪の頬をつつくナマエの手を振り払い「帰る!」と踵を返した

「あ、待って待って、勝己くん」

「あ?」

「忘れ物」

渡されたコンビニ袋には甘そうなお菓子がいくつか入っていた
忘れ物、なんて言っているが明らかにナマエが買ってきたものだ
それを忘れ物、と表現するのはよくお菓子を渡してくるから

「いらねぇわ!」

「そんなに色々拒絶してたら見える物も見えないゾ。君よりすこーし大人な私からの忠告だったり?」

爆豪と同じぐらいの身長のはずがパンプスを履いているせいかほんの数センチだけ身長が高いナマエが覗き込むように爆豪を見つめてウィンクする

少し屈んだせいで胸元のボタンを2つほど開けているシャツから見える白い肌に嫌でも目が行く

ナマエという女が明らかに善良な市民であるが故に手は出せないので口を出しても交わされ敵わない

悔しさと共に何故か慣れ親しんでしまった空間と結局いつもの様に貰ってしまったお菓子袋を片手に爆豪は今日も帰路に着く

調子を乱されるとはこの事だ
相容れぬ2人が交わるとどんな反応を起こすのか




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