小説 | ナノ

 21話




ゴンの様子が気になって自分の試験が終わると同時にゴンの眠る病室へ向かうナマエ

病室の扉を開くと痛々しく包帯の巻かれたゴンが眠っていた

規則正しい寝息に少し安堵してナマエは包帯の巻かれたゴンの腕を撫でるように触った

「ゴン…ゴンはいつも無茶するよね、でも私ゴンに出会えてよかったよ。早く目を覚まして」

安心したナマエは自然と自分が微笑んでいる事に気付いた

初めて話しかけてくれたキルア、明るく常に仲間を思うゴン、賢明に場を見据え的確な判断を下すクラピカ、誰よりも優しい心を持ったレオリオ

ハンター試験という短期間でナマエは多すぎる出会いをした

(ゼンさん、私ハンター試験受けてよかったよ)

こんなに良い人達に会えるなんて、と心落ち着かせて数十分か数時間、ある程度時間が経った時ナマエは鋭い殺気に思わず席を立った

ヒソカの殺気でもネテロの威圧でもない
嫌な予感がして病室を小走りで抜け出すと試験会場の扉からキルアが出てくる所に出くわした

「キルア…?」

「ナマエ…」

声をかけた時にナマエは顔から服まで血に濡れたキルアを見て嫌な予感が当たりひどく後悔した


「キルア…もしかして殺したの?」

「あぁ」

「どうして?失格になっちゃうんだよ!?」

「…あぁ」

「一緒にハンターになろうって言ったのに!」

決まった返事か返事をせずキルアは黙ってナマエの横を通り過ぎた
まるで抜け殻のようだ
血に濡れた頬を拭きもせずキルアは去って行った

遠くなっていくキルアの後ろ姿にナマエは喪失感と絶望感に見舞われた
四次試験まであれほど近かった距離が今では手も届かず名前さえ聞こえない距離だ

「なにが…守るための力だ…!」

誰も居なくなった廊下でナマエの声が虚しく響く

その静寂を破ったのはキルアが出てきた試験場の扉が開く音だった
見慣れない黒の長髪の男性が出てきた

「もしかして君がナマエ?」

悲しみから座り込んでいるナマエには男に返事する気力すらなかった

「オレはイルミって言うんだけど。あ、キルの兄貴なんだ。試験中キルがお世話になったね」

キルアの兄と知らされナマエは涙ぐみながら顔を上げるとイルミと目があった
底のない闇を見ているような目をしていた

「いやぁキルがおかしな事言う物だから困ってたんだ。でも無事反省して家に帰ってくれるみたいで良かったよ」

「キルアが…?」

飛行船であれだけ嫌っていた家族の元に自ら帰るとは考えにくい
疑問を持ったナマエがイルミに問うとイルミは「あぁ」と肯定した

「キルアは何を…言ってたんですか?」

「君達と友達になりたいんだってさ特に君のことは熱心に語ってたよ。笑えるよね、キルの天職は殺し屋なのに」

口調は笑っているのに表情は一切動かないイルミを不気味に感じたがそれよりもイルミの最後の一言が許せなくてナマエは立ち上がりイルミの胸ぐらを掴み上げた
自分でもらしくない、と思いながら怒りが抑えられなかった

「私もキルアと友達になりたい!いや、なる!!キルアの人生を決めるな!!」

涙が溢れそうなのを抑えてイルミを睨みつける
胸ぐらを掴まれて叫ばれても微動打にしないイルミはゆっくりとした手つきで掴まれてるナマエの腕を掴み返す
尋常じゃない握力で骨が軋む音が聞こえ怒りを鎮めるようにナマエは手を離した

「…キルアは家に帰ったんですね?」

「そうだよ」

「分かりました…私はあなたが嫌いです。イルミ」

イルミ。嫌という程頭に名前を叩き込みナマエはイルミの前を去った






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