◎ 18話
キルアと順番に野営をするようになって数日が経った日
キルアに見張りを任せてナマエは少し離れた人目につきにくい川で水浴びをしていた
流石に1週間以上も体を流せないと女としては解せなく我慢ができなかったのだ
キルアには「本当緊張感ねぇなー」と呆れられた
すぐに体を流して上がれば済むだろうと思っていたが甘かった
身一つで水浴びをしているのだ、警戒は万に一つも怠ってはいなかったが首筋に当たるトランプ
「…ヒソカ…」
「やぁ」
ヒソカの独特な口調がナマエを強張らせた
「プレートなら今は持ってないですよ」
「いやいやプレートなんてどうでもいいんだよ。ボクはただ君と少し話したかったのさ」
相変わらず語尾にハートでも着きそうだ
プレートが目的ではないとするとこの物騒なトランプ型の凶器をしまって欲しい
恐らく念によって強化されたものだと理解したが“凝”という目にオーラを集中させれば見える事は出来るがハンター試験前にゼンとの約束でナマエは念能力が使えない
まさに絶対絶命の場面でヒソカはナマエの背後で笑っていた
「クックッやっぱり君は念を使えるね…ねぇボクと遊ばないかい?」
「…今は念を使えません…」
「本当かなぁ」とヒソカはナマエの背中に指先を当てがい上から下へと撫で下ろした
ビクリと反応した時ヒソカの殺気に夢中で自分が裸だということを忘れていた名前は身近にあった服でなるべく肌を隠した
「良い反応だねぇ…おや、これは」
「…っや」
嫌がるナマエに関わらずヒソカはナマエの腕輪を見るために腕を掴み上げた
「…確かに念は使えないみたいだね。残念、残念。楽しみはまたの機会に取っておくよ」
スッと首筋からトランプが引かれヒソカの遠のく足音が聞こえてハッと息をついた
恐怖と恥じらいと様々な感情が入り乱れて混乱したナマエは乱雑に服を着て髪も乾かぬまま走ってその場から遠退きキルアのいる場所へと急いだ
「おーおか…おま!なんだよその格好!」
「き、キルア…」
「ナマエ…?」
キルアが野営している場所へ戻るとキルアがナマエを見ると同時に濡れた髪と乱れた服に動揺したが明らかに何かに怯えているナマエにキルアは無意識のうちに手を広げナマエを抱きしめていた
「なにがあった?」
「ヒソカと…会った…」
「はぁ!?」
抱きしめたナマエの肩は小さく震えていてなにかされたかと問い詰めたが「何もされていない」の一点張りで信じる他無かった
震えるナマエを抱きしめたまま震えが止まるまでキルアは話を聞きながらなるべく平常心を保ち相槌と説教を繰り返した
「落ち着いたか?」
「うん…キルア、ありがとう…」
いつも通りになったナマエを見てキルアは安堵すると同時に以前ナマエが言っていた「いつも通りのキルアが好き」という発言をなぜか理解した
「俺も…いつものお前がす、…好きだぜ」
ナマエは顔を赤くしてキルアの胸元に顔を隠した
この好きが友達としてなのか友達以上なのか今はまだ分からないが特別な感情を互いに抱いているのは確かであった
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