小説 | ナノ

 12話




「二次試験後半の料理審査は合格者0よ!」

なにやらメンチが電話で誰かと言い合っているが合格者0を変えないと頑なである

受験者達が声を荒げる中、上空から声が聞こえてきた

「それにしても合格者0はちとキビシすぎやせんか?」

ハンター協会のマークが描かれた飛行船から1人の老人が遥か上空から無傷で降り立った

「審査委員会のネテロ会長、ハンター試験の最高責任者よ」

「会長さん…!」

ナマエがネテロをまじまじと見ている間にメンチと話の折り合いがついたらしく審査は続行される事になった

「それじゃあ、新しい料理はゆで卵」

ネテロが乗ってきた飛行船で少し遠くの山まで移動して崖の前に降り立った
実演と言ってメンチは軽く崖へと飛び降りてマフタツ山に生息するクモワシの卵を軽く取り戻ってきた

「あーよかった」

「こーゆーのを待ってたんだよね」

「走るのやら民族料理よりよっぽど早くて分かりやすいぜ」

「あの卵美味しそう!」

各々捨て台詞を吐き躊躇いもなくナマエ達は崖を飛び降り、そして卵を無事取ってきた

二次試験後半は合格者42名で幕を閉じた

そして合格者42名を乗せた飛行船は明日の朝8時到着予定の目的地へ向かうまでのつかぬ間の休息を与えられた

「ゴン!ナマエ!飛行船の中探検しようぜ!」

「うん!」

「楽しそう!」

試験の直後だというのにも関わらずゴンとキルア、ナマエは元気よく廊下へと飛び出していった
その後ろ姿をレオリオとクラピカは「元気な奴ら…」とぐったりした様子で見つめていた


「私飛行船って初めて乗ったよ!とっても広い!」

「おい見ろよ!景色いいぜ!」

飛び回るナマエをキルアが窓際の席へ座らせ飛行船から見える夜景を3人で見つめているとゴンが「キルアの父さんと母さんは?」と尋ねた

「んー?生きてるよー多分」

「多分?」

「何してる人なの?」

キルアは窓を見つめ天気の話でもしているかのように「殺人鬼」と答えた

「両方とも?」と聞くゴンにキルアは笑った

「おもしろいなお前!マジ面でそんなこと聞き返してきたのお前が初めてだぜ」

「え?だって本当なんでしょ?」

ゴンとキルアが12歳とは思えない会話を繰り広げているとキルアはふとナマエを見る

「ナマエは?どう思った?」

「…あの、私本当世間知らずで…島から出たのも最近で…さ…」

「で?」

もごもごと言い淀むナマエにキルアは催促の言葉を投げる

「殺人鬼って…なにかな?」

「は?」

文字通り目が点になったキルアは数秒固まった
引かれるか怯えるか首を差し出されるか冗談だと笑い飛ばされるかと思った以上の斜め上のナマエの発言にキルアは胸が高鳴るのと同時に先ほど以上に笑い転げた

「お前ら本当!オレの腹がよじれるわ!」

しばらく笑い転げた後キルアは深呼吸をしてナマエの方へ向き直った

「オレん家、暗殺稼業なんだよね。家族ぜーんぶ。そん中でもオレすげー期待されてるらしくてさー…でもさオレ嫌なんだよね人にレールしかれる人生ってやつ?」

そこからキルアは家族に対しての愚痴をこぼしていた
喧嘩の末、母と兄を刺して家を飛び出したらしい

「キルアは兄弟がいるんだね!そのお兄さんはどんな人?」

「お前また変な事聞くな〜オレが刺して出てきたのはミルキって言うブタくんだよ」

「兄弟かぁ、いいなあ」

「ナマエは家族の事覚えてないの?」

キルアの兄弟話に花を咲かせているとまたゴンがケロリと核をついた話題を振ってくる

「…お母さんがいたよ、とっても優しかったの」

「そっか、ナマエが言いたくなったらまた教えてよ!」

「うん、ありがとうゴン」

3人は身の上話をしながら飛行船から見える夜景を楽しんでいた






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