◎ 2話
お互いを名前で呼び合うようになって2人の距離はどんどん縮まる
いつの間にか下校時に爆豪はナマエを待つようになっていた
そんなある日の帰り道
「そういばさー、俺のクラスにデクってのがいてこいつ本当になんもできねーの!無個性なんだぜ!無個性!」
ケラケラと笑いながら話す爆豪にナマエは初めて爆豪に対する小さな怒りを感じた
「…ねぇ勝己くん。私も個性、ないんだよ」
本当はなんでその子のこと馬鹿にするの?酷いよ勝己くん、なんて言いたいことは山ほどあったが絞り出したナマエの掠れた声は確かに爆豪に届いた
瞬間2人の間を冷たい空気が通り抜けたような気がした
今まで和気藹々と話していた空気が嘘みたいに凍りついたのを肌で感じた
それでも私は間違ったことを言っていないとナマエは爆豪が口を開くのを待った
「…お前も無個性なんか」
「私はまだ可能性はあるって信じてる。でも無個性だからって勝己くんに馬鹿にされたら、私すっごく悲しい」
ナマエの精一杯の心の声
これまでの爆豪との距離を無かったことになんてしたくない。
顔を上げて恐る恐る爆豪の顔を見るナマエ
「お前に個性が出なかったら…俺の事務所で雇ってやる」
目があった爆豪は迷いのない目をしていた
もしかしたら馬鹿にされる、哀れまれる、と思っていたナマエの想像を遥かに超えた発言に目を見開いて心が震えたのを感じた
「…うん!その時は、お願い…しようかな!」
涙が溢れそうになるのをなんとか抑えて口元を緩めて笑った
「ナマエちゃんって個性ないらしいよ〜」「え〜可哀想、無個性ってことじゃん」「個性が無いなんて可哀想」散々言われてきた言葉を勝己くんが打ち破ってくれたような気がした
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