小説 | ナノ

 3話


ナマエが初めて出会った老人の名前は“ゼン”と言った
初めて会うナマエに対して欲のない人間に初めて交わす命令でない言葉
初めての事ばかりに戸惑うナマエにゼンはひたすら優しく言葉をかけ生きていく上での知恵を教えた

ゼンと過ごすようになり街での暮らし方や言葉遣いなどを教わり約1年が過ぎた頃ナマエに「これまでの中で1番大切な事を教える」とゼンに畏まって告げられたナマエはゼンの前に正座する


「ナマエ、お主が初めて会った時に使っていた“人に命令する”能力を“念”と言う」

「…念?」

「そうじゃ、念とは体から溢れ出す生命エネルギー…所謂“オーラ”を自在に操る能力じゃ」

「私そんなの教わってないよ?」

「それはきっとナマエが持つ紺碧の瞳が理由となっているんじゃろう。その瞳には特別な力が備わっている」

まぁわしの推察じゃがな、と付け加えるゼンにナマエは初めて納得がいった
目の前で自決した村の人々、街で声をかけてきた人達は皆ナマエの命令にやけに従順だった

「やはり自覚しておらんかったようじゃな。…よいかナマエ、その力はナマエ自身を守るにも他を守るにも様々な形で使える。じゃが裏を返せば簡単に人をも傷つけ、殺める能力じゃ」

「…うん」

「だから正しい使い方をわしが教える。そして出来れば正しく念を使って欲しい」

「うん、私も…出来れば誰かを守るために使いたい…」

正しい使い方を知っていれば正しく母親を助けられたのかもしれない。
ナマエの心は至って純粋である
それをゼンは見抜いていた
過去に人を言葉で殺めた事を悪と判断したナマエの決断は正しかった

そしてその日から念の使い方についてナマエは学んでいった

初めから念を使えていたナマエの飲み込みの能力はゼンを驚かせ凄まじいスピードで成長していき常人が習得する何倍、何十倍をの速さで念を習得していった

「ついてはナマエ、わしが思うに主は特質系じゃと思うが一応、一般的な念の系統別診断、水見式というものを行う」

「水見式?」

「グラスを手で覆い練を行うのじゃ」

そう言うとゼンはグラス一杯に水を張りその上に1枚葉っぱをのせた

“練”とは精孔を広げて、通常以上のオーラを出す事である

ナマエは頷くとグラスの前に手をかざした

すると葉がまるで生きているかの様に成長を初め双葉、三つ葉と増えていった


「…やはり特質系じゃったの」

念には大まかに強化系、放出系、操作系、特質系、具現化系、変化系の6種類があり特質系は他に類のない特殊なオーラを放ち他の系統のオーラを引き出す事も可能である

ナマエは生まれつき特異な体質によって特質系に属していた

そしてその日からナマエは正しい念の使い方や修行に勤しんだ






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