小説 | ナノ

 12話



転校初日は休み時間のたびにクラスの子達からの質問責めであったナマエはへとへとになり帰宅する

両親と「学校はどうだった?」などと他愛ない会話をし「なんとか馴染めたよ」なんて返事しておく
気になったのは隣の席の男の子
なんとなくクラスのみんなが一線置いているような、1人孤立したような雰囲気を出した男の子だ

せっかく隣の席になったんだ、とナマエは次の日少年に声をかけた

「私ミョウジナマエ、改めて君の名前教えてほしいな」

「…轟焦凍だ」

至極簡潔に必要最低限の会話しかしない少年の名前は轟焦凍と言うらしい

「轟くんか!よろしくね」

「…他に、なんもないのか…?」

「え?他って?…んーと、じゃあ好きな食べ物…とか?」

今まで無表情、いやむしろ毛嫌いしているような顔をしていた轟が初めてナマエの方を向いて驚いた顔をした

「俺の事、いや俺の親の事とか知らねぇのか?」

「もしかして有名人なの?ご、ごめん気付かなくって!」

慌てて謝るナマエに轟はこの日初めて小さく笑った

「いや、なんもねぇ。気にすんな。…好きな食べ物は蕎麦だ」

轟の右隣に座っていたナマエは初めて轟の左側を見た
整った容姿には随分不釣り合いの火傷の跡が顔の左側に痛々しく残っていた
それはどうしたの?なんてお気楽な質問は出来ないまま「蕎麦が好きなんだぁ」と返すのが精一杯だった


その日から轟と話す回数が増えていったナマエ
時にはまだ届いていない教科書を見せてもらった事もある

そして今日も今日とて

「…本当ありがとう轟くん」

「気にすんな、仕方ねぇ」

転校生らしく移動教室の場所が分からず迷子になっていたナマエを轟がたまたま見つけ案内しているところだった

「助かっちゃったよ。凝山中学校って校舎広くてまだ全然教室覚えらんなくって」

「まだ1年もあるんだ。その内覚えられんだろ」

「1年…かぁ。せっかく轟くんと喋るようになって来たのにちょっと寂しいね」

隣にいる轟に寂しく笑って見せると轟は足を止めた





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