◎ 10話
いつまでも続くと思っていた日常が壊れたのは両親の一言
ー「転勤することになったんだ」
ー 「だから学校も転校しなくちゃいけないのよ…」
ごめんね、ナマエ。と言われた言葉が胸を抉ってどこまでも落ちていくような落下感に見舞われた
1番初めに浮かんだのは爆豪で、その次に 緑谷。それからクラスの友達や先生達
あまりに唐突に突きつけられた現実に返す言葉もなくナマエは俯き抜け殻のように頷くしかなかった
両親からの知らせをみんなに伝えなくては、と思うが次の日もその次の日も何も切り出せないままどん底のような気分で日々が過ぎていく
「なんかあったんか」
久しぶりにちゃんと声を聞いた気がした
ハッとして前を向くとナマエの顔を真っ直ぐ見つめる爆豪
「どうせナマエ、テメェの事だからうじうじどうでもいい事で悩んでんだろ。分かりやすいんだよ」
「勝己くん…」
なんて伝えれば良いのか分からないまま、ナマエは言葉より先に涙がこぼれ落ちてしまう
その事に爆豪は驚いて珍しくうろたえる
「どっ…どうじよう…!転校…っする事になっちゃっだ…っ!」
こぼれ出したら止まらない涙と共に上手く話せないままなんとか言葉を紡ぐ
その場にしゃがみ込んでしまいそうになったナマエの肩を掴み爆豪の胸へと寄りかかるように体制を整える
「転校…するんか。…いつだ」
「ら、来週…っ」
泣き止まないナマエの肩を優しく抱きながら落ち着かせるように声を抑えて話す
誰にも話せないまま転校の日は来週にまで迫っていた
口に出す事でより一層悲しくなったナマエは止まりかけていた涙がまた溢れる
来週、と聞いてナマエの肩を抱く力が増す爆豪
正直爆豪自身も整理がついていない
しかし爆豪はなによりもナマエの涙に弱かった
「泣くんじゃねぇ…別に2度と会えなくなるわけじゃねぇんだ」
「いつ…っいつ会えるの…?」
それは…と言葉に詰まる爆豪
腕の中の少女は爆豪を困らせるのが得意なのか泣きながら小さな肩を震えさせる
土壇場、ナマエが泣いていてその肩を抱く状況で頭をフル回転させた爆豪の答えは
「雄英で待ってる」
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