短編 | ナノ

 三途の川が見えたんだァ





1年生である監督生のナマエと3年生のイデア・シュラウドはお付き合いをしている
もちろん周囲は知っているしナマエがニコニコしながら聞きたくもない恋バナをするので2人がラブラブなのも周知の事実だ

そして1年生と3年生なので授業のコマ割りももちろん違う
ナマエが空きコマにイデアの部屋を訪ねるのも今に始まった事でもない


「イデアさん次はなんの授業なんですか?」

「魔法史だね、今教室にタブレット向かわせてる」


そしてイデアは例え次の授業があったとしても基本タブレット参加なのでナマエが部屋に来ても追い返す事は無いし寧ろタブレットを授業に置いて実体は可愛い彼女とイチャイチャするという他の男子生徒が聞いたら集団リンチにあった挙句起訴されて金を取られて晒し首にされる様な男である

膝の上にナマエが乗ってきたらイデアは嬉しそうに腰に手を回す

イデアもナマエも2人きりになれる時間が好きだった
初めの頃、ナマエはイデアに授業をサボらせているんじゃ、と後ろめたく感じていたが当の本人のイデアは多分教師が聞いたらぶん殴られるぐらいに授業内容を舐めているのでナマエを引き止め引き止めしている内に妙な背徳感をも楽しむようにもなってしまっている


「イデアさん、授業始まっちゃいますよ」

「大丈夫、この授業内容なら全部分かるし念の為録音もしてある」

「私膝の上座ったままではお邪魔では?」

「ナマエも3年になったら習う授業から予習だよ...それにご褒美」


イデアはナマエの腰を逃がさないと掴み耳元で甘い声で囁く
耳元でビックリするぐらい甘い声を出すもんだからナマエは顔を赤くして「あい...」と頷くしかなくなる

相思相愛だと分かってお付き合いした時からイデアは今までのはなんだったの?本物の陰キャとオタクに謝れよってぐらい積極的になった
まぁしかし1歩部屋を出ればいつも通りなので根っからの部分は変わらないのだろう

なのでナマエはこのギャップに毎度良いようにやられている
本当は自分の顔の良さ気付いてんだろ、計算だろ、詐欺だ!と内心逆ギレしてはいるがそれが精一杯の反抗だった


授業開始のチャイムがなり教室では浮遊するタブレットが隅に配置される
そうなればあとは一切触らなくても大丈夫だ

イデアはキーボードから手を離し画面から目を離してナマエを見つめる
ナマエもまた見つめられて見つめ返す
別に2人ともなんの声も出さなかったが磁石みたいに2人の唇がくっ付いた

触れるだけのキスを終えるとナマエはイデアの胸板を軽く押した、拒絶の色だ


「...どうしたの?」

「授業中ですし...先生の声も聞こえてきます...」

「大丈夫。こっちの声は聞こえないよ」

「そういう事じゃなくて...」

「じゃあこっちおいで」


ナマエは日本の大和撫子なので人に見られて興奮する性癖は無いし人の声や物音がする所でイチャつくなんて恥ずかしいという意味で拒絶したのだが、伝わったのか伝わってないのかイデアはナマエを膝の上から退かせて手を引っ張ってベッドに座らせてデスクの上に置いてある箱から適当に取ったヘッドホンを耳に付けてやった


「これでちょっとは聞こえないでしょ」

「そ、そうですけど...」

「今僕ら2人だから、安心して」


これまで人と深く関わっていないせいで理詰めや理論値ばかりを叩き出すイデアにはこの恥じらいや後ろめたさを吐き出しても別の方法で口を封じられるのだろう
ナマエは諦めて握ってきたイデアの手を握り返してナマエの肩に頭を乗せてきたイデアを許諾して青い炎をフワフワと撫でてやる

するとイデアはこれを承諾の合図と取ったのか調子に乗り始めナマエの太ももに手を置いて優しく撫でた
ビクッと反応したナマエはダメですと言おうとして「ダ」の部分でイデアの唇によって言葉を奪われた


さっきとは違う噛み付くみたいなキス
付き合うのはお互いが初めてだというのに所詮雄と雌なのだ、どうすれば気持ちいいかを学習し快楽に溺れる

イデアの舌がナマエの唇をなぞるとナマエは口を開いて舌を絡ませるともうこの時点で2人のスイッチはONどころか上がりまくりだ、ブレーカーごと落とさない限り冷静にはなれないだろう

だがしかし忘れてはいけない今は授業中であり授業に出ている生徒は真面目な奴から態度が悪い奴、寝ている奴も含めて授業に出ている
まさかイデアがタブレットを利用して部屋で彼女とイチャイチャしてるとは夢にも思っていない、なぜならイデアは勤勉な精神に基づく寮の寮長なのだから


だからだろう、バチが当たったのだ


2人は長く激しいキスをしてイデアは鬱陶しそうに上着を脱いで適当に放り投げた
その拍子にデスク前のゲーミングチェアに上着が少し当たってゲーミングチェアがデスクにこつん、とぶつかる
ぶつかった拍子に今度はデスクの上のペンに当たりコロコロ転がって先程ナマエの耳を抑える為に出したヘッドホンが入っていた箱から飛び出したコードにペンが引っかかり重りになって箱から昔使ってた小型の有線イヤホンがデスクの上のキーボードのエンターキーの上にカンっと小さな音を立てて落ちた
さながらピタゴラスイッチの完成である

そんなピタゴラスイッチが行われていても当の本人達はベッドの上でヒートアップしながら激しいキスを交わしているので気付きもしなかった

頬を赤くして息を荒くしたナマエは同じく息を乱し赤くなっているイデアの首に手を回す

「イデアさん...もっと...」

「可愛い...」






一方その頃イデアがタブレット参加している魔法史の授業

生徒の半分は白目を向いて睡魔と戦っており残り2分の1は高校生らしく悪ふざけをしており残りが真面目にノートを取っていた

トレイン先生は黒板にチョークで分かりやすい文章や例文、ポイントなどを書いている片手間に睡魔に負けた生徒と悪ふざけをしている生徒を確認して出席簿の名前の横に正の字を書いてカウントしている
きっちり5回溜まれば教育委員会が黙認している罰が下る

一通り黒板に文字を書き終わるとこの例文の答えを誰に言わせるか振り返ってクラスを見渡した矢先である


『イデアさん...もっと』

『可愛い...』


クラス中が鉄砲を撃たれたみたいに静まり返って皆息をする事さえ忘れた

ベッドの布切れが擦れる音が聞こえたと思ったら明らかにそういう時の甘い声を出す女の声と男の声
一瞬訳が分からないと言うのと同時に本能でそういう場面だと理解し脳味噌がショート寸前の男子生徒一同の中、真っ先に状況を理解したのはモーゼズ・トレインである

トレインは1番教卓から遠い端の席に浮遊するイデアのタブレットを持っていたチョークをぶん投げて破壊した

生徒は全員「ふーん、チョークってタブレット貫通するんだ」と思った

そして綺麗に1拍置いてからイデアのタブレットが壊されたという事は先程のいやらしい妖艶な声はナマエ!?そして甘ったるい声で返事をしていたのはイデア・シュラウド!?

全員が凍りついたみたいに固まったし理解したけど意味が分からなかった

トレインはこめかみに青筋を立ててブチ切れていた





イデアとナマエはそんなピタゴラスイッチがあったなんて露知らず、ノリノリで甘い雰囲気を楽しんでいたがイデアのスマホが鳴り2人ははっ、と息を着く
イデアは誰だよこんな時に、とイライラしながら1度目は誰からの着信か名前も見ずに無視したが間髪入れずに2度目の着信が入ったので小さく舌打ちを打って表示された名前を見るとオルト・シュラウドだと気付き仕方なく電話に出た

「なに、オルト今...」

「兄さん何やったの!!なんかトレイン先生が不純異性交遊!って言いながら兄さんの部屋に向かってるよ!!」

「へ?」


イデアは青ざめてデスクトップに目をやる
お願いします、神様、周期表じゃなくて聖書読みますから、教会にも通うし恵まれない子に口座の金全て寄付するし、太陽の真下で神様に愛言葉呟く毎日を過ごして真っ当な人間になりますから
どうか勘違いであってくれ、というイデアの祈りは虚しくタブレットのマイクモードがONになっていた

数秒後に怒り狂ったトレインが怒鳴り込んでくるがイデアの運命はいかに







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