土砂降りの雨だった。朝、天気予報をちゃんと確認しなかったのが災いして、私は傘を持っていなかった。・・・でも、今はそんなこと、どうでもよくて。考えられなくて。ただ、真っ暗な気持ちで、ひとりぼっちで雨に打たれていた。動けなくて、悲しくて、でもまだなにか期待してる。もう、来るわけ無いのに。頭の中がぐちゃぐちゃになりながら立ち尽くしていたら、突然、私に降り続けていた雨が止んだ。驚いて振り向くと、よく知った男の子が、そこに立っていた。

「・・・何、泣いてんねん」
「おしたり、くん」

 私から雨を凌いだのは、忍足くんの傘だった。ポーカーフェイスな彼だけど、私に向けられる眼差しから、心配してくれているのだと感じ取れた。




「忍足くん、お風呂、ありがとう」
「ん、ええよ。乾燥機、もうちょっとかかるわ」

 ソファに座っていた忍足くんに後ろから声をかけると、忍足くんは読んでいた本を置いて立ち上がる。

「コーヒーとココアと・・・あと緑茶もあるわ、何がええ?」
「そ、そんなおかまいなく」
「ええから。暖かいもん飲んだら、落ち着くやろ。何がええ?」
「じゃ、じゃあ、ココア」

 ん、と短く返事をした忍足くんは、手際よくホットココアを作ってくれた。ソファに座っていると、すっと差し出して横に座る。いただきます、と一言言ってから口付けた。甘い、優しい味。胸に染みるようで、さっき散々風呂場で泣いたのに、また涙が滲んできた。

「・・・跡部くん、来なかったの」

 ぽつりと、口に出した。忍足くんに目を向けると、真剣な眼差しでこちらを見ていた。
 跡部くんは、中学に進学した時から憧れの存在だった。俺様気質だけど、色々な才能があって、人望があって。幼稚舎から氷帝にいた私にとって跡部くんの登場は衝撃的で。途中から入ってきたのに、あっという間に氷帝中の有名人になって、大勢から慕われて。最初は本当に憧れだけだった。恋心に発展したのは、高校一年時に同じクラスになってからだった。
 きっかけは些細なことだったけど、どんどん好きになって、止まらなかった。だんだん仲良くなっていけているのを感じていたときは本当に嬉しかったし、ドキドキした。跡部くんがどう思ってくれてるかなんてわからなかったけど、私は跡部くんが好きだった。
 そして、今日。一大決心、跡部くんに告白することに決めた。ベタかもしれないけど、手紙を書いて下駄箱に入れた。学校近くの公園に、放課後に待っていると、大切な話があると、綴って。
 何分でも、何時間でも待てると思った。部活や生徒会の活動で何かあって遅くなっているのかもとか、色々考えて、待っていた。すっかりあたりが暗くなっても、わたしはずっと待っていた。土砂降りになっても、そこを動けなかった。来てくれないなんて、信じたくなくて。

「・・・告白も、させてもらえなかったの」
「・・・」
「わたし、ずっと待ってたのに」

 涙が絶えなく溢れる。そんな私の話を、忍足くんは黙って聞いてくれた。
 忍足くんとは、中学一年のときに同じクラスになって親しくなった。跡部くんのことを、一番相談したのも忍足くんだった。告白することも、忍足くんにだけ、事前に伝えていた。公園に迎えに来てくれたのも、何も連絡してこない私を気にしてのことだったのだと思う。優しさに、つい甘えてしまった。

「・・・なまえはよぉ頑張った。いつも一生懸命やったん、俺が知っとるから」
「・・・うん」
「跡部は・・・どないしたか、知らへんけど。なまえはこない一方的なフラレ方、してええわけあらへん」
「うん・・・あ」
「とにかく今日は、泣きたいだけ泣いて。あんな奴のこと忘れや。な?」

 忍足くんに、そっと身体を引き寄せられて、顔を胸板に埋める形になる。優しく包むように、抱きしめてくれた。あやすように背中をさすられて、髪を撫でられる。

「う、うあああ、っ、おしたり、くん」
「ええよ、泣いて。今日はずっと付き合うたるから」

 子供みたいに、泣きじゃくった。忍足くんにしがみついて、わんわん泣いた。どれくらい泣いたかわからないけど、私の涙が枯れるまで、忍足くんは付き合ってくれた。



「・・・ありがとう。忍足くんが来てくれてよかった」
「気にせんでええよ。もう涙枯れたんか?」
「うん、もう大丈夫。・・・だから、あの・・・」

 すっかり涙も枯れて、少し心も落ち着いてきた。そうなってくると、忍足くんに抱き締められているという事実に恥ずかしくなってくる。そんな私の気持ちをよそに、忍足くんは私を優しく抱きしめたまま、私の髪を撫でていた。

「跡部んこと、忘れられそうか」
「・・・まだ、すぐには。でも、ゆっくり立ち直れるようにする」
「・・・そうか」

 だから、もう離していいよ、と言おうとした時、忍足くんが私の頭に顔を埋めた。抱え込まれるようになって、余計に密着する。

「・・・んで、跡部やねん」
「え、?」
「俺にしといたらええやん」

 忍足くんは私の身体を抱きしめたまま、ソファに雪崩れるようにして私を押し倒した。密着した身体に、のしかかる忍足くんの体重。何が起きてるのかわからなくて頭が混乱し始めた。

「忍足、くん」
「忘れさせたるから」

 目を合わせて、そう言われた。射抜くような視線に、心臓がドクリと音を立てた。こんなふうに見られたのは初めてだ。長い付き合いなハズなのに、こんな忍足くん見たことない。

「っあ」

 動揺している私に構うことなく、忍足くんは私にキスをした。優しい口付けから、何度も口付けるたびに激しくなっていく。抵抗しようと両手で肩を押すけどびくともしない。顔を両手で固定されて、横に振ることもできなかった。強引に舌が押し入ってきてぞわりとした。

「っう、んんう、はぁ、おひはりふ、っんっ」

 ちゅ、じゅ、と音が立てられて、耳に響く。厭らしい音に身体が反応してしまう。すると忍足くんの手がわたしの身体をいやらしく撫で始めて、身体が硬直した。

「っはぁ、っ、だめ、忍足くん」

 やっと、唇を離してもらえた。でも、私を触る手の動きは止まらなくて、そのまま貸してもらって着ていたスウェットに手を掛けた。忍足くん、本当に。手を掴んで止めようとするけど、あっさりと上を下着ごと捲くられてしまった。

「・・・綺麗やな」

 そう呟いた忍足くんは、胸元に舌を這わせ始める。舐められたところが熱い。いやらしく吸い付きながら、両手でおっぱいを揉み始めた。

「ちょっやだ、忍足く、だめ」
「ん、っ柔らこうて、可愛えな。すぐ良ぉしたるから・・・ちゅ、っ」
「ひあぁんっ!」

 舌が片方の乳首へあてられて、じゅるっと吸い付かれた。思わず上がる声に、忍足くんの口端が上がる。

「可愛え声、もっと聞かせてな」
「っひ、や、だめ」

 甘い声で囁かれて、もうどうしたらいいのかわからなくなる。こんな、こんなの、知らない。こんな忍足くん知らない・・・! まるで知らない人みたいで、でも、確かに忍足くんで。混乱と、確かに伝わってくる快楽で頭がごちゃごちゃになっていた。

「っひう、ん、はぁ、っやだ、おしたりくん、やだぁ・・・」
「ちゅう、っちゅ、ふ」

 思わず忍足くんの頭を掴んでしまう。退かそうにも力が入らなくて、もどかしく指に髪が絡まるだけだった。今まで発したこと無い自分の声に戸惑いながら、身体を捩らせた。散々泣き腫らしたのに、また涙が滲んできた。

「っひあん! やだ、そこ」
「めっちゃ濡れとるよ・・・もっと気持ち良ぉしたるから」

 大人しくしとき、と耳元で吐息混じりに囁かれて、きゅんと下腹部が疼いた。ショーツ越しに撫でられたおまんこは自分でもわかるくらい濡れている。それは、きっと今までの行為が気持ち良かったことの証明で、それを忍足くんはわかってる。ズボンごとショーツを下げられて、ぐっと足を開かされた。

「っだめ、見ないで」
「嫌や」

 両手でがっちり太腿をつかまれて開かされる。そのままそこに忍足くんは顔を埋めた。されることに予想がついて、顔が紅潮した。

「っだめそんなとこ、ひあぁん!」
「ちゅ、じゅるる、っ」

 深いキスをするようにそこに口付けられて、身体が震えた。気持ちいい、と感じてしまった自分がはしたなくてつい涙がこぼれた。忍足くんは舌で容赦なくそこを攻め立てて、歯がクリトリスを掠めた。

「っやあん! だめ、そこだめぇっ」
「っふ、なんや、クリちゃん気持ちええ? いっぱいしたろな」
「ひ、ああんっらめ、やぁんっ!」

 そこが弱いとわかった忍足くんは、執拗にクリトリスを攻めてきた。舌先で転がしたり、ちゅうと吸いついたり。もう、何も考えられない。ただただ気持ちよくて、流されてしまいそう。忍足くんは舌の動きをやめないで、指を一本中に挿入してきた。

「あぁんっだめ、だめなの、あぁあっ」
「っふ、ナカ、ひくひくしとるで? イきそう?」
「ひあぁっわかんな、っらめやら、ひあぁぁああっ!」

 びくっびくびくっ!! 腰が跳ね上がって、全身がビクビクと脈打った。ナカからじゅわ、と液体が溢れるのを感じて、頭がぼんやりとした。忍足くんは口を離して、指でナカを拡げながら、そっと耳元に下を這わせてきた。

「イったん?」
「っ、ばか、も、いやだぁ、うっ」
「泣かんで、な? ええ子やから」

 なんで、なんで忍足くんが、そんな切なそうな顔するの。息を乱しながら、何も言えなくなってしまう。そうしてる内に、忍足くんが指を抜き、自分のベルトを外す音がした。

「っだめ、だめだよ、忍足く、それだけはだめ、っ」

 忍足くんが自分のおちんぽを取り出して、入り口に宛てがった。初めて感じる硬い感触に、ぞくぞくした。そこまでしたら、本当にもう友達には戻れない。何も無かったことになんてできないんだよ。そんなわたしの思いとは裏腹に、忍足くんのおちんぽがナカに押し入ってきた。

「っあ痛、いぃっ」
「っ、ごめんな、なまえ、ほんまに、ごめん」

 大きいそれが押し入ってきて、さっきほぐされてたハズなのに痛みが響く。忍足くんは、本当に辛そうに謝ってくるのに、その行為を辞めなかった。

「くるし、よ、っう、も、やだあ、っ」

 もう自分で自分がわからない。こんなのだめだって思うのに、すっごく痛くて、酷いことされてるのに、忍足くんのことを強く拒否できなかった。それは、きっと忍足くんの瞳が、悲しそうだから。そんな顔しないで欲しい。そんな顔されたら、何も言えなくなってしまう。それなのに。

「好きやねん、なまえんこと。ずっと前から、ずっと好きやった」

 なんで今、そんなこと言うの。おちんぽが奥まで刺さって、ゆっくりと動き始めた。まだ痛いし苦しくて、呻き声のような苦しい声が口から溢れる。こんな時に限って、優しくキスされた。

「おした、くっ、はぁ、っらめ、らめなの、っ」
「ごめん、ごめんな、なまえ、はぁ、っく」
「いやっ、ひう、っはぁ、んっひゃあ」

 どんどん動きが激しくなって、徐々に快感が滲み出てきた。忍足くんに身体を変えられているみたいだ。忍足くんは激しく腰を振りながら、クリトリスを指先で弄ってきた。

「やあっらめらめぇっむり、忍足くっ忍足くんっ」
「なまえ、なまえっ、はぁ、っな、ゆうし、って、呼んで」
「ひう、っあ、はあっゆ、しっゆうしっ」

 もう何も考えられなくて、うわ言のように名前を呼んだ。忍足くんが嬉しそうに頬を綻ばせて、益々動きが激しくなる。もう、限界がきた。

「だめっもうむりぃっはあっあぁん!」
「っ俺も、イくからな、っなまえんナカで、俺んちんぽイくで・・・っ」
「ひ、っあああああああんっ!!!」

 びく、びくびくっ!! がくがくと身体が震えて、忍足くんにぎゅうぎゅうに抱き締められる。そのまま忍足くんのおちんぽがナカで脈打って、温かいものが広がるのを感じながら、意識を失った。







 なまえの身体を拭いてやり、お姫様抱っこでベッドへと運ぶ。寝かせてやり、シーツをかける。その横に座った。
 疲れきって眠ってしまったなまえの髪を撫でる。綺麗で、艶のある髪。ずっと触れたくて仕方が無かった。出会ったときから、四年間ずっと、ずっと好きだった。

「なんで、跡部やねん」

 さっき言ったことを、もう一度呟く。なまえの目元は、泣き過ぎで少しだけ腫れていた。
 俺やったら。俺やったら、なまえのこと泣かせたりせえへんのに。ずっと大事にして、幸せにしたるのに。シーツにもぐって、なまえの身体を抱き寄せた。柔らかい身体に心が締め付けられる。そっと、触れるだけのキスをした。柔らかい唇に、病みつきになりそうやった。

 なまえが、跡部に告白するって言うてきたとき。ほんまにもう終わったとおもった。今まで小細工して告白を先延ばしさせてきていたが、もうどうにもならへんところまできていたのだ。跡部がなまえんことを大事に思っとったんは知っとった。俺は、なまえに告白をさせへんようにするしかなくなっとったんや。
 ラブレターを、跡部の手に渡る前に回収した。可愛らしい文字で書かれた、放課後公園で待っていますの文字。ベターなハートのシール。跡部くんへ、の、文字。もう跡形もないよう破り捨てた。
 最低なんはわかっとる。もう、俺は最低のまま、なまえのことを愛することを決めた。なまえを抱きしめる力を強め、髪に顔を埋める。可愛い、可愛い俺のなまえ。俺の気持ちを利用してしまったと、なまえは自分を責めるかもしれへん。俺からも、離れようとするかもしれへん。でも、絶対に手放さん。もうどんな手を使ってでも、なまえを俺のものにする。無理矢理なまえの処女を奪って、全部中で出した。絶対に手放したくない。妊娠してしまえばいいと、本気で思った。

「愛しとるよ、なまえ」

 眠っているなまえに、そう囁いた。そしてなまえを抱きしめたまま、俺も眠りについた。

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