メーキングメモリーズ | ナノ


05  




※やたら長ーい世界設定に入ります!面倒臭くても付き合って下さい!!
 百合男

「―.....もっとも、君は何も憶えていないみたいだけど」
青い空には雲がかかり、太陽が見え隠れする。

「で、僕はそのウィンタリオンの息子、リリーム。君の世界では百合男って名乗ってたけど」
「何の話してんだよ。ウィン...?何とかとか....」
「.....いいよ、教えてあげる」

彼をベッドに座らせ、僕はその前に椅子を置いて、腰掛けた。

「ここは、神として竜が頂点に鎮座する町、アザン。
 竜によって地は潤い、竜によって町へ加護が降り注ぐ。
 逆に言えば、その存在が無くなれば、地は荒れ衰退し力も使えない。
 力っていうのは.....」

僕は一呼吸置き、持っていた護身用ナイフで思いっきり腕を裂いた。
「ぅあああああ!?.....」
「痛ったぁー」
壁際々まで避ける彼。
驚いたように目を見開き、肉の剥き出した腕を凝視する。
だくだくと止まりなく流れる血液。

「例えば、傷を治したり、」
掌に集まる光の粒子を、傷の上にかぶせた。
「うわぁ....」
みるみる回復して行く腕の傷に、彼は歓喜の声を漏らす。

「とか、....はい、掴まって」
彼の腕を引っ張ると、再び光の粒子たちを集合させた。
今度はそれを、2人の身体ごと覆わすと、
「行くよっ」
自らを粒子に変換させた。

「ぅうううー」
「ははっ、もういいよ」
さっきと然程代わり映えしないが、紛れもなく違う部屋。
「え、ど、どこ...」
「僕の部屋、.....こうやって、自分の思い通りに色んなことが出来るんだ」

ティーポットに茶葉を入れる。
趣味で集めるカップに、そっと注ぎ込む。

「はい、紅茶」
「.....ありがと」
砂糖とミルクをテーブルに置く。

(.....どこまで話したっけ....)
「あ、そだ。.....で、こう言う力は、他にも攻撃用とかもあって。
 それも竜が発する加護のおかげなんだ」
漂う光たちが僕の前にやって来た。
彼には何も見えないようで、「なになってんだよ」と不思議がられた。

僕は微笑むと、続けるよと紅茶のおかわりを注ぐ。
「竜にも人間と同じように寿命があって、歳を取って老化する訳じゃない。使用期限みたいなのがあるんだ。生まれて生涯18歳前後。
で、今の神竜がウィンタリオン、僕の父親さ。
父は人間になることが出来た。
そうやって出会った女との間に出来た子供が、僕を含めて3人。
兄と僕と妹。
あと、君だよ。ヴァーナル」
「.....は」
間抜けな声を出す彼に微笑んだ。

「思い出せない?」
「な、なにを.....」
その顔は困惑に満ちている。

「君はある日、この町に捨てられていた。
その時君は4歳、僕も4歳。
名の無い君に、父と兄と3人でヴァーナルと名付けた。
その後13年間、僕達は共に過ごした。

......けどある時、父とどこかの竜族との戦闘があって、それに敗れた父は消えた。
これも寿命だ。って言って。
その後その竜族も忽然と姿をけして、
君もどこかに消えて、
兄もすぐに旅に出た。

あれから1年、次の神竜も現れず、父がこの地に溜めていた力も底を突きかけ。
兄も殆ど連絡をよこさない。

悠一寄越した手紙には、君を連れてくるように書かれた便箋と、
君の居る世界への地図とその方法。

僕にその理由は分からないけど、兄の言う事は絶対だがら....はは
だから、始業式のあの日に、転入生だ。って言って侵入したんだ。

君は、.....違うみたいだったけど。
初っ端から睨むんだもん。

で、その日のうちに連れて来た。
君がいた世界がどういう所かは知らないけど、戻る所の目算が狂っちゃたんだ


........ハイ!!説明終わり!長かったぁー。何か思い出した?」

「い、いや全く....」
「......そっかー」

色んな事態を考えて、あまり期待はしては居なかったが、長ったらしい説明をさせられた挙句、何も思い出していないとなったら、少しは堪える。

「えっと....つまりは、竜がいて、すごい力が使える俺の育った町?」
「まぁ、ざっくりと言えば」
今までの僕の説明はなんだったんだろうと、あまり理解していない様子に、悲しくなる。

「で、その.....リリーム....の父さんと俺って、どんな関係?親?」
「あははっ」
リリーム。
彼から発せられる温かく、懐かしい響き。
「百合男でいいよ。思い出したら、その名で呼んで」
急に恥ずかしくなったようで、彼は少し頬を染めた。

「君と父さんは友達だったよ、いい」
え、と意外そうな顔をする。
普通は父と子ってのが浮かぶ、けど
「人の姿だろうが竜だろうが、何百年生きようが、知識以外は心も身体も18前後。父親と言うよりも、友達として接するほうが自然なんだよ」
「へぇー」
説明を飲み込もうと格闘する彼。

「僕ら3人は子供だから父さんなんて言うけど、この町の人も神と言うより、同じ町の住民として接していたから」

へーと、僕が何かを言う度に深くなる眉間の皺。
「春光君、君が僕を思い出さないうちはそう呼ぶよ。だから、早く思い出してよ」
「あ、あぁ......」
彼は語尾を濁らした。

そんな彼は、何かに気付いたように、首を回し視線をちらつかせた。
「な、なぁ。百合男」


prev / next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -