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少女、見定める [ 5/41 ]


 食事を作り終えた私は、少年の様子を見に部屋へ戻ると彼らは起きていた。
「気分はどうですか?」
「だ、大丈夫です」
 私の顔を見た途端、顔を真っ赤にしてシドロモドロに喋る少年に対しウサギもどきが文句を言っている。
「昌浩や、女の裸を見たくらいでぶっ倒れるなよ」
「黙れもっくん!」
「もっくん言うな、晴明の孫」
 突如始まった言い合いに私は呆気に取られる。一体こいつら何しに来たんだ。
「あの……私に用があって来られたのではなかったのですか?」
 用件は何だと暗に言えば、一匹と一人はお互いの顔を見合わせ本来の目的を思い出したのかバツの悪い顔をしている。
「長い話になりそうですね。これから夕食なんです。良かったら、食べながらお話しません?」
 こちらは腹減ってんだこの野郎と眼光に込めて言えば、少年の腹はグーッとタイミングよく音を鳴らし返事をした。
 私は、広間に彼らを誘い招き入れる。既に雑鬼達が、卓袱台におかずを並べていた。
「おー、孫と式神じゃねーか」
「孫いうな!」
 少年の言葉を綺麗にスルーしつつ、妖に問い掛ける。
「あら、知り合い?」
 小猿を思わせる妖が、この少年達と面識があるのに驚いた。
「おう」
 満面の笑みを浮かべて胸を張る姿は可愛いのだが、天敵と仲が良いってどうなんだと思わなくもない。
 まあ、私の知っている大妖怪もかつて花開院本家に飯を食べに行っていたことがあるくらいだから、それもありなのだろう。
「藍、ご飯食おうぜ。腹減ったよー」
 食卓に並ぶ料理を前に待ちきれないらしい雑鬼達に、私は苦笑を浮かべた。
「お二人もどうぞ」
 席を勧め席に着いたのを確認し、合掌の合図を雑鬼が上げる。
 「頂きます」の合唱に、呆気に取られる彼らを見て細く笑みを浮かべたのは言うまでもない。

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