小説 | ナノ
少年、悲鳴を上げる [ 4/41 ]
衣装チェンジは気分なんです、って言うのは大嘘ぶっこきました。
神子と持て囃されるようになり、雑鬼が要らぬ気を利かせて神子装束を調達してくれたので、お勤めが終われば脱ぐ言わば制服感覚になりつつある今日この頃。
肩が凝って仕方がないとボヤキながら神子装束を脱ぎ捨て、お手製甚平を羽織ろうとしたらガサリと音が聞こえた。
「ん?」
音の方へ視線を向けると、見覚えのある顔が二つありビシッと固まる。
「キャァァアアアッ!」
隠すことなく全裸になっている私を見て悲鳴を上げる少年に、あんぐりと顎を落としているウサギもどき。
悲鳴を上げたいのは私の方なんだけどと思いつつも、無言で甚平を着込み身支度を整え彼らに声を掛けた。
「あの……何か御用でしょうか?」
私と目が合った瞬間、てプシューッと湯気が出るんじゃないかと思うくらい少年の方は顔を真っ赤にして倒れた。
「ムグゥーッ」
ドシャッと鈍い音と共にウサギもどきから、この世のものとは思えぬ情けない鳴き声が聞こえてきた。
目を回している一人と一匹を部屋の中に入れるのが先決か。
ウサギもどきの上に乗っかっている少年を退かし、まず先に軽いウサギもどきを部屋の中へ入れた。
ついで少年なのだが、なかなかどうして年の割りに筋肉がついている。服の上から触っても固い。
「相当鍛えてる?」
見かけによらないものである。一見女の子みたいな顔をしているのにちゃんと男の子している。
取敢えず目を覚ますまで寝かせておけば大丈夫だろう。
私は、彼らを放置し食事の準備をすべく部屋を後にした。
電化製品に慣れた現代っ子には厳しい環境であることには変わりなく、火を簡単に熾すマッチもどきを開発したり圧釜を作ってみたりと現代知識を大いにフル活用している。
簡易貯蔵庫から食材を取り出し、お得意のガッツリ男飯に取り掛かる。
「藍、魚取ってきたぞー」
「よくやった! 今日は豪華よ」
ビチビチと生きの良い魚をまな板の上にのせ、ダンッとぶつ切りにする。
荒は味噌汁に投入し、身は塩焼きにして薬味に大根をのせる。
この時代で食わず嫌いや好き嫌いなんてしていたら生きて行けないのだ。
いかに上手い飯が食べれるか。日々それだけを研究していると言っても過言じゃない。
「久々に肉食いたいわー。鳥とか豚とか牛とか……家畜飼おうかしら」
魚も美味しいのだけど、血肉になるならやっぱり肉でしょう。
私は、肉に思いを馳せながら料理作りに勤しんだのだった。
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