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5.愚帝に爆弾を投下しましょう [ 12/21 ]


 ルー君とルークを連れ、やってきましたグランコクマ! 彼らの髪は目立つので、ディスト作髪留めで髪の色をカモフラージュしていたりする。
 朱から金へと移り変わる美しい髪を拝むことが出来ないのは非情に残念ではあるが、危険を避けるには致し方がないと言えるだろう。
「ジェイド達大丈夫かなぁ?」
と心配気なルー君。本当いい子だ。あんな役にも立たない無能軍人達の心配を出来るなんて、私には到底真似できない。奴らの顔を見たら、問答無用でグラビティを放っているだろう。
「ゴキブリ並の生命力がある方達ですので大丈夫でしょう」
「それもそうだな。先に着いてるかもしれないし」
 気を取り直すルー君に、ルークがすかさず突っ込みを入れた。
「それはない」
「何で?」
「今まで一度足りと寄り道なしで目的地に辿り着いたことあったか? なかっただろう。絶対寄り道しているはずだ」
 力強く断言するルークに、ルー君は確かにとそうだったと顔を顰めた。
「まあ、無能共が居なくて私としてもやり易いんで良いんですけどね。まずは、謁見の場で現状報告しましょうや」
 現状報告と言う名の吊るし上げになるわけだが、それを察知したルークは物凄くキラキラと輝くような良い笑顔を浮かべている。ジェイドの失態について、マルクトへ責任追及して憂さ晴らしをしようと考えているのが手に取るように分かる。
「ルーク様、参りましょう」
 私達は、王城へと足を踏み入れたのだった。


 ところ変わり謁見の場では、親善大使ご一行の顔ぶれが異なることに違和感を覚えたピオニーが王位から見下ろすようにジェイドの行方を聞いてきた。
「親善大使の一行にジェイドが同行していたはずだが、あいつはどうした?」
「恐れながら、わたくしがご説明させて頂きます」
 形ばかりの臣下の礼を取り、説明役を買って出ると怪訝な顔をされた。
「あんたは、ルーク殿の護衛か?」
「わたくしは、メシュティアリカ・アウラ・フェンデと申します。ルーク様とは、アクゼリュス崩落の際に知り合い同行を願い出ました」
「フェンデ……フェンデ家の者か! しかし、ホドで皆死んだはずだが……」
「我らフェンデ家は、ユリア直系の子孫です。ユリアの譜歌で生き延びました。とは言え、わたくしがフェンデの者と証明できるものは、この首飾りだけですが」
 首に掛けていた首飾りを外しピオニーに手渡す。因みに、この首飾りは一度エンゲーブで旅費の足しにと売り飛ばした代物である。
 ルークが私のために買い戻してくれた為、売るに売れなくなったので邪魔以外何物でもなかったりするのだが、ルークはそんなこと知る由もない。
「! 確かに、これはフェンデ家のものだ。そうか、まさかこんな形でフェンデの者と出会えるとは思ってもみなかった」
「陛下、アクゼリュス崩落はローレライ教団が裏で手引きした結果に御座います。また、カーティス大佐もそれに関与している可能性が高いと判断致します」
 感慨に耽るピオニーを無視し、サクサクと現状報告をする私に辺りは騒然となった。まさか、己の幼馴染且つ懐刀と呼ばれる男がアクゼリュス崩落の手引きをしたなんて信じたくもないだろう。
「まさか! ジェイドが、そんなことをするはずがないだろう」
「ルーク様からアクゼリュス崩落までの経緯を伺ったところ、彼も共犯だとしか思えない行動の数々に否定は出来ないと判断致します」
「……どういう事だ?」
「神託の盾騎士ティア・グランツが、ファブレ公爵家を襲撃した際に剣の師であるヴァン・グランツを庇い擬似超振動をお越しマルクトへ誘拐されたのはご承知のことだと思います。和平の密命を受けていたはずのカーティス大佐が、漆黒の翼をタルタロスで追回したことで追い詰められた賊にローテルロー橋を落とされる失態を犯し、更にはエンゲーブに立ち寄ったルーク様を不法入国と称し捕縛。和平強要・戦闘強要・不敬罪と罪状はつきません。事情聴取もせず罪人ティア・グランツを野放しにする。また、彼は導師イオンを誘拐していた為、神託の盾騎士がタルタロスを襲撃しました。その際、カーティス大佐以外のマルクト兵は全員死亡しています。彼が、指揮を取っていれば少なからず全滅は免れたでしょう」
 ピオニーの顔が徐々に般若と化している。いや、彼だけじゃない。両脇に控えている将軍とか高官の顔が滅茶苦茶怖ろしい。青ざめるルー君には悪いが、無能眼鏡の罪だけじゃないのだとチクっておこう。
「その後、ガイ・セシルと名乗る自称ルーク様の護衛と合流しタルタロスを脱出した後、キムラスカに向かったまでは良かったのですが、カイツールで鮮血のアッシュにルーク様が切り殺されそうになった時も彼は平然とした顔でそれを見ていたそうです。キムラスカに戻り親善大使として任命されたルーク様に対して、相変わらず不敬の連発ですし、攫われた導師救出を断れば文句をいい、挙句全て事後承諾で勝手に決めてしまう始末。結果、アクゼリュス到着が大幅に遅れました。あれだけ時間があったのにも関わらず、彼はマルクト軍に救助隊の派遣を要請していなかったのですね。キムラスカの救助隊は既にヴァン・グランツに殺された後でした。ヴァンにマルクトの民を人質に取られ、暗示を掛けられていたルーク様は無理矢理超振動を使わされパッセージリングを崩壊させました。これがアクゼリュス崩落の全貌です」
 色々端折ってはいるが、大方合っているだろう。ブルブルと身体を震わしながら聞いていたピオニーが思い口を開いた。
「その話は本当なのか? 本当だとしてもジェイドが、共犯だとどうして言える」
「カーティス大佐は、和平ではなく戦争を望んでいたと思えば彼の行動はしっくり来るのではありませんか。アクゼリュス崩落は、スコアにも読まれていますからね。パッセージリングは、ダアト式譜術で厳重に封印されていました。しかし、それを導師自ら解除してますので教団絡みで戦争を起こそうと動いているようにも取れます。戦争すれば功績を挙げやすいですし、カーティス大佐の自尊心を満足させるには十分でしょう」
「……」
「後ガイ・セシルと名乗る自称ルーク様の護衛ですが、今のうちに消した方が宜しいかと」
「何故だ?」
「彼は、ガルディオスの嫡男です。ガルディオス家の剣・右の騎士と云われたペールギュント・サダン・ナイマッハが、ファブレ公爵家で庭師として働いています。彼らが敵国にいる理由など一つでしょう」
 切り捨てるか、それとも無かったことにするのか。全ては、ピオニーの判断によって今後が決まる。
「陛下、選択を誤れば終焉を迎えることになるのをお忘れなきよう」
 酷薄な笑みを浮かべる私に、ピオニーは首を項垂れ重たい溜息を吐いた。

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