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13.探索タルタロス [ 14/72 ]


「どうしますか、ルーク様」
 探索するかと問い掛ければ、彼はかったるそうにうーんと唸った。
「見なくてもいいけど、やることねーしなぁ。ちょっくらブラつくか」
「じゃあ、私が案内しちゃいますね
 挙手しながら猫なで声でルークににじり寄るアニスを彼は一刀両断した。
「その辺にいる兵に頼むから良いわ」
「ええーっ、そんなこと言わないでくださーい」
 目指せ玉の輿を掲げているアニスは、焦った様子でルークに擦り寄っている。見ていて見苦しいこの上ない。
「……タトリン奏長。導師守役は、いつ如何なる場合であっても導師のお傍を離れず仕えるものだと認識しておりますが?」
 直訳すると『いいから引っ込め失せろ雌豚』になるわけだが、丁寧な言い回しの裏に隠された思考をアニスが読み取れるはずもなかった。
「タルタロスの中は安全ですから、ちょっとくらい離れてても問題ないんですぅ。て言うかー、貴女には関係ないと思います」
 関係なくないから口出しているのだが、まあ自分も神託の盾騎士団に所属しているとは明かしていないのでお相子か。
 モースは、礼儀知らず恥知らずな子供を導師守役にしたのか謎だ。ルークに対する不敬だけでなく、職務放棄も更に加わり一歩間違えればイオンの立場を危うくするという事に気付かなかったのだろうか。
「いつの間にそんなに大らかになったんでしょうか、オラクル騎士団は」
「いや、こいつの脳内だけの話だと思うぜ」
 心底呆れ果てた顔でアニスを見るのは、どうやら私だけでなかったようでルークも冷たい視線を送っていた。
「ティア、行こうぜ」
 仔ライガをフードの中に入れたルークは、部屋を出るぞと私を促した。
「はい、ルーク様」
「あ、待ってですの!!」
 ピョンピョンと足元で飛び跳ねるミュウを誤って蹴り飛ばしてしまったのはご愛嬌。私達は、アニスを置いて部屋を後にしたのだった。


「どこを見ますか? 艦橋・休憩室・食堂・作戦会議室・兵士の私室に機関室と言ったところでしょうか」
「流石に機関室や艦橋・作戦会議室は見れないんじゃねーの?」
「確かに。あ!」
「どうしたんだよ?」
「いえ、仔ライガのご飯もといミルクを調達したいので調理室に行きたいのですが構いませんか? ついでに非常食もかっぱらっておきましょう」
 生まれて間もない赤ちゃんに固形物は厳禁だ。あの非常識眼鏡のせいで仔ライガの粉ミルクを調達できなかったのだ。タルタロスで強奪しても問題はないだろう。
「窃盗かよ!」
「非常識極まりない理由で拘束した慰謝料と思えば安いでしょう。本当なら今頃、エンゲーブに戻ってのんびりしていたはずなんです」
 拳を作って力説すると、ルークもそれはそうかと納得した。うーん、段々私の影響を受け始めているようだ。
 私達は、手始めに食料庫を訪れることにした。もちろん、食料を強奪するためだ!
 それなりに広い食料庫には、ダンボールが山積みになっている。
「レトルト食品ばっかりじゃねーか」
「あら、こっちは戦闘糧食って書いてあるわよ」
 持ってみると意外とぎっしり入っているのか重たい。何が入っているのか気になる。
 裏を返してみると、中に入っているものが記載されていた。
「主食だけでなく、おかずやデザート果てはドリンクまで入ってるわ」
「本当か!? どんな味なのか気になる」
 ルークは、興味津々に私の手の中を覗いている。非常食なのだから味は然程美味いとは言えないのだが敢えて伝えないでおくことにした。
「数十袋パチッておきましょう。ルーク、ミルクは見つかった?」
「ああ、見つかったぜ。でも、粉ミルクだ」
 別の場所をゴソゴソ探していたルークが、粉ミルクの缶を引っ張り出してきた。
「それも4〜5缶ガメましょう。懐が痛まないって素敵ね!」
 道具袋にいそいそと詰め、暫く飯の心配しなくて良いと喜んだのだった。

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