小説 | ナノ

5.恥じらいを持て [ 6/72 ]


 買い物を終えたルーク達は、宿を取り荷物の整理をしていた。因みに部屋は一つである。
 一週目の時も思ったことだが、ティアは女の自覚が足りないとルークは思った。
「……なんで一緒の部屋なんだよ」
「節約に決まってるじゃない」
 節約だと宣うティアに、ルークは彼女が買い占めた荷物の数々を指差して吼えた。
「節約するなら無駄買い占めたグミとかだろう! しかも、1つ5万ガルドもする道具袋買うなんて信じらんねー」
 ティアは、フッとそれを鼻で笑いこう言った。
「ホドに伝わる諺では、安物買いの銭失いっていうのがあるのよ」
「高けりゃ良いってもんじゃねーだろう」
 ものには限度があるだろうと訴えても、彼女は意に介さない。一週目よりもまともに見えるが、根っこはやはり人の話を聞かない女だ。
「高いだけで買ったわけじゃないわ。この道具袋、譜術が施されて別空間に道具を仕舞える仕組みになっているのよ。辻馬車で首都を目指そうって言ったのに、色々見て歩きたいって言ったのはルークよ。この先、野宿もありえるもの。大きな荷物も別空間に収納できる道具袋があれば、移動で重い思いもしなくて済むでしょう。五万ガルド払う価値はあると思わない?」
 真剣な顔で正当性を主張するティアに、ルークは調子を狂わせっぱなしだ。
 確かにどうせなら前回と違う方法で戻るつもりだったし、ティアの言うとおり今後のことを見越して色々見ておきたいとも言った。それが、どうしてこうなるのかサッパリだ。
「それ、お前が持てよ。俺は、絶対持たないからな!」
「ルークに持たせるわけないじゃない。あ、でもグミとボトルはちゃんと持ってね。後、少ないけどガルドも渡しておくわ。もし、逸れても数日分の宿代にはなるから」
 そう云って渡されたのは、1万ガルド入った財布と高価なグミとボトルにルークは頭を抱えた。どこのお嬢様だ、この女。嗚呼、そう云えばティアはユリアシティでは市長の娘だったな。
 それなりに贅沢はできたのだろう。一週目と違いアニスに叩き込まれた金銭感覚が、この時ばかりは恨めしい。
「ルークの髪は、目立つからフードを被るかバンダナで隠すかしてね」
 彼女は、ルークの為に見繕った防具や護身用の剣に防御力に優れた服をベッドの上に置いている。
「へーへー」
 適当に返事をし、これからどうするかなと考えていたら衣擦れの音が聞こえティアの方を見て悲鳴を上げた。
「ばっ、うわぁぁっ! 何服脱いでんだよ!!」
「この服じゃあ目立つでしょう。着替えよ」
 バサッと軍服を投げ捨てると、大きな胸を惜しげもなく晒しながら白いシャツに袖を通していた。
「胸がきついわ。もう一回り大きいシャツにすれば良かったかも」
 ティアは、ブツブツと文句を言いながら黒パンツに履き替えていた。所要時間は、僅か1分。凝視しちゃいけないと分かっているのだが、目の前で着替えられては目をそらすこともできない。
「ん? どうかした?」
「……恥じらいを持てくれ本気で頼むから」
「恥じらいでお腹は膨れないわ! 前髪も邪魔ね。ちょっと待ってて。切るわ」
 とことんマイペースな彼女は、鏡の前で櫛とハサミを取り出し長かった前髪を切っている。
 あまりにも違う現状に、ルークはもしかして別の世界に来てしまったのではないかと不安になった。

*prevhome#next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -