小説 | ナノ

35.ネビリム戦その後 [ 36/48 ]


 レプリカ・ネビリムを背負えと言った後、ガイは泣いて土下座した。私は、平気で触れるのに他の女なら泣いて嫌がるとはどういう了見だ。
 結局、ケテルブルクの宿までアッシュに担がせた。勿論、タダとはいかず仕方無しにご褒美を用意した。
 気が付いたレプリカ・ネビリムを幾度と無く昏倒させ――説得し、ケテルブルクを立つ頃には立派なM嬢じゃなかった。下僕でもなく……部下となった。
 快適とは言いがたい空の旅を満喫するのも後僅かだ。帰れば、溜まった書類が山のように積まれているだろう。
 その前に、
「レプリカ・ネビリムの名前も考えないとダメですよね。」
と言えば当の彼女は無表情でこう言った。
「別に呼び方なんて何でもいい」
 何とも淡白な反応である。出会い頭の時は、製作者のジェイドに全否定されたせいでネビリムに固執していたのだが、今では見る影も無い。
「元が一つだったとしても、貴女と彼女は違う存在です。それに、名前は個を表すものです。貴女が、貴女だという証でもあるのですよ」
 そこまで言うと、彼女の頬がうっすらと赤く染まった。無表情なのに面白い芸を持っていると感心したのは内緒である。
「何か良い案はありませんか?」
 私一人で考えるよりは、誰かの意見を聞くのも一つかと思い振ってみる。
「アーティチョークはどうですか?」
「花の名前ですね」
 ディストが思いついたように出した花の名前に、私は花言葉を思い出し顔を引きつらせる。花言葉が『警告』なんて本人知ったら怒り狂うのではなかろうか。
「他にはありませんか?」
「アフェラドラ」
「……古代イスパニア語で“雄雄しい”ですよね。明らかに男性に対する名前でしょう。却下」
 シンクの案を素気無く却下すると、今度はアリエッタが挙手した。
「アリエッタは、ユッカがいいと思うです」
 まともな名前がやっと出たことにホッと安堵したものの、次が頂けなかった。
「ネビリム2世で良いだろう」
「アッシュ……貴様、考える気0だろう」
「こいつの名前なんて実際どうでも良いしな」
 アッシュは、ハッと鼻で哂い飛ばしている。彼女を部下にしてからアッシュの機嫌は下降気味らしく、事ある毎に絡んでは返り討ちにされている辺り相当鬱憤が溜まっているようだ。
「ジョゼットとガイは何かないか?」
「うーん……名前のセンスがないのでパスさせて下さい」
 両腕を交差させバッテンを作り申し訳なさそうにするガイを見て、私はファブレで飼っている家畜にも『ハンバーグ』とか『豚どん』とかあんまりな名前をつけていたことを思い出し、思わず顔を手で覆ってしまった。
「そうですね……。ロベリアなんて如何ですか?」
「ロベリア……ロベリア・カーディナルスですか。それ良いですね。キムラスカに着いたら、早速その名前で戸籍を作りましょう。良いですか?」
「ルルが決めたならそれで良い」
 こうして、レプリカ・ネビリムの名前が決まったのだった。

*prevhome#next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -