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34.過去の清算と思わぬ産物 後編 [ 35/48 ]


 急遽、ダアト組を緊急招集しやってきましたケテルブルク。
 前衛は、ジョゼット・ガイ・アッシュ。後衛は、私・ディスト・アリエッタ。フリーでシンクを入れてネビリム戦に向けて宿の一室で作戦会議をしている。
「まずは、封印された惑星譜術を解かないとですね」
「ディスト、解く方法知ってるのかよ?」
「ファーストからセブンスまでの音素が宿った物を揃えれば解けるでしょうね」
 被験者ネビリムが考案した惑星譜術。音素を宿したものを探しだし、それを揃えてネビリムの封印されている場所まで運ぶのは一苦労である。
「面倒臭いですね」
 ボソッと呟いた本音に、ディストの顔が引きつっている。付き合いの長いガイは、その先の言葉が予想できたのか顔に手を当てて項垂れていた。
「アッシュ」
「何だ?」
 突然名前を呼ばれたアッシュは、首を傾げながらも律儀に返事を返した。それが、不幸の始まりだとは知らずに。
「超振動は、制御の訓練はしてましたか?」
「ああ、まあそれなりに」
 その言葉を聞いて、私はニッコリと笑みを浮かべて言った。
「先鋒はアッシュで決まりですね。封印場所に着いたら、超振動でぶっ壊して下さい」
「「「「えぇぇぇぇぇえっ!!」」」」
「まどろっこしいのは嫌いなんです。サクッと片付けて、休暇を満喫しましょう。ネイス先生、例のものは準備出来てますよね?」
「は、はい」
「では、参りましょうか。いざ、ネビリム戦へ」
 折角の一週間をレプリカ・ネビリムのために時間を割くのは勿体無い。私達は、装備を強化した後、彼女が封印されているネビリムの岩へと向かったのだった。


 強いと聞いていたが、何とも呆気なく倒した感が否めないネビリム戦。決め手となったのは、溜め・詠唱なしで連続高等譜術を浴びせられた彼女は今や虫の息である。
「思ったよりも弱かったですね」
「あんたが、化け物なんだよ」
 げっそりとした顔のシンクが、私を化け物扱いしてくれた。しっかり頷くディストは後でボコり決定だ。
「か弱い乙女を化け物呼ばわりとは、イケテナイ二歳児にお仕置きが必要か?」
 微笑を浮かべて脅しを掛けるも、最近ダアトで揉まれるようになったせいか怯んだ様子もなく言い返してくる。
「あれだけバカスカ高等譜術ぶっ放しといて、TP切れ起こさないってどんだけなのさ。化け物以外何者でもないでしょう」
「まあ、確かにインディグレイションを5回ぶつけてましたね」
「ルル様、6回です」
 すかさずガイからの訂正が入る。5回も6回も変わらないだろうに細かい男である。
「それより、止めを刺さないのか?」
 チャキッと剣を構えるアッシュに私は待ったを掛ける。折角、追い詰めたのだ簡単に殺してしまっては勿体無い。
「彼女が欲しいので連れ帰ります」
「「「「えぇぇぇぇぇえっ!!」」」」
「ちょっと、何考えてるんですか! バカですか? バカなんですか? 今は、アレですけど回復したら殺されますよ」
 絶叫するディストに、私は落ち着けと頭を容赦なく殴り飛ばした。
「音素欠落を補強すれば、殺人衝動は収まるのでしょう。その為にそれを作らせたのですから。後は、調教じゃなかった……教育を施せば問題ありません」
 ディストに作らせたバングルを両手に嵌め、私は道具袋からキムラスカ製特殊紐を使いレプリカ・ネビリムを縛り上げた。
 取敢えず、ファーストエイドを掛けておくことは忘れない。
「さ、ガイこれを運んで下さい」
「お、俺ですか?」
 何故と言いたげな顔に、私は仕方がなく説明をしてやった。
「一番体力があるでしょう。途中でアッシュと交代させますからさっさと運べ」
「俺もかよ!」
 アッシュの突っ込みは華麗にスルーし、私は戦利品としてレプリカ・ネビリムを回収したのだった。

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