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21.新しい護衛が出来ました。 [ 22/48 ]


 延命の為にキムラスカで検査してみないかとイオンを誘ったわけですが、それが亡命に発展し、現在名前を変えて私の護衛に就いていたりする。
 オリジナル・イオンはエリクシルと改名し、ぽやや〜んとしたレプリカをフローリアン、ツンデレな方がシンクと名付けられた。
 レプリカ情報を抜き取られた影響で一時期は体調を崩していたエリクシルも、一年後に死ぬとは思えないくらいピンピンしている。
「病死ではなく毒殺の間違いだったのでは?」
 カルテを見ながらボソッと呟いたディストに、私は有得るなと頷いた。
「毒薬で抵抗力が下がった身体には、病原菌に対抗しうる術は皆無でしょうね。今は、ネイス先生のお陰でその心配もありませんけども。エル、良かったですね」
「本当に。それより、エルは止めて下さい。女の子みたいで嫌です」
 私がつけた愛称にケチをつけるエリクシルは無視して、彼が持参した禁書を開き指し示す。
「貴方のお土産にちょっと興味深いものを見つけたんですよ」
 パッセージリングの細かい操作が書かれた一文に、耐久年数の文字を指差して見せる。
「パッセージリングの耐久年数がどうしたんですか?」
 意味が分からないと首を傾げるエリクシルに対し、ディストは何かに気付いたのか考え事をしている。
「ヤバイですね。外殻大地を支える柱が崩壊したら魔界にドボン。既に耐久年数を越えている今、いつ壊れてもおかしくないと云うことですか」
 オールドラントは、惑星本来の大地の上に人工大地が覆う二段構造になっている。
 今よりも遥かに進んだ技術を持つ創世暦時代の譜業を直せるかと云えば、恐らくは無理の一言に尽きるだろう。
「ガイから定期報告が届いたのですが、マルクトで瘴気障害を患う者が出ているそうです。滅亡のカウントダウンは、既に始まっているのかもしれません」
 痛いのと苦しい死に方は嫌ですねと本気で宣う私に対し、ディストが目を吊り上げて怒り出した。
「何冗談を言ってるんですかっ! まだ私のレプリカ研究は、完成してないんですよ!! こんなところで死なれたら、もっと研究が遅れるでしょう」
 流石科学者怒りのポイントが違うと感心していたら、エリクシルがゴスッとディストの頭をグーで殴って黙らせた。
「あんたの研究なんてこの際どうでも良いんだよ!! それよりルル様、ガイって誰ですか?」
 え? 気にするところそこですか? 思わず突っ込みそうになった私は、根性で言葉を飲み込みエリクシルの質問に答えた。
「私の護衛です」
「「ハァ!?」」
 カッと目を見開き驚く姿は、なんだか新鮮で面白い。
「護衛なら何でマルクトに居るんですか!?」
 声を荒げるエリクシルに、思わず苦い笑みが零れた。
 まさかそんなに早くマルクトまでタイプライターが流出すると思わなかったのだ。
 シェリダンの技術者が派遣されるまで最低でも半月は掛かる。操作方法や簡単な修理はガイで出来ると判断し残したのだ。
「タイプライター普及の為、ケセドニアで待機させてんですが……。マルクトに流通したタイプライターのアフターケアで呼び出しでもくらったんでしょう」
 旅券はキムラスカ領事館で発行して貰ったのだろう。ガイも、まさか生まれ故郷に足を踏み入れることになるとは思っていなかったに違いない。
「タイプライターとは、あのボタンがいっぱい付いているアレですか?」
「そう、あれです。それとは別にシェリダンでMCの開発をしているので、完成したら是非ネイス先生に使って頂きたいですね」
「私に、ですか?」
 キョトンとした顔で首を傾げる姿に、私は不覚にもときめいた。三十路前のおっさんがしているんだと頭の中で分かっていても何か可愛い。
 年齢を感じさせない顔の作りだからか? そんな疑問が頭に浮かぶが、エリクシルからブーイングが上がった。
「私には無いんですか?」
「無いですよ。1台開発するのに相当金食って高いんですから。そう言うことは、譜業マニアになってから言って下さい。ネイス先生には、MCの操作及び修理要員になって貰うんですから」
 そして、MCを携帯電話同様に世に知らしめる為に馬車馬のように働いて貰うのだ。
「……そんなことだろうと思いましたよ」
 ディストは、ハァと溜息を吐きガックリと肩を落としたのだった。

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