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18.出奔ですからお姫様! [ 19/48 ]

 
 馬鹿だ馬鹿だと思っていたら、やからしてくれました。
「……ナタリア姫。何故、貴女が此処に居る」
 ズキズキと痛む頭を抱えながら、軽装かつ護衛もつけずケセドニアに居るのだと問い質せば、
「あら、何を仰いますの。外交は初めてでしょう。貴女の為を思って追い掛けて差し上げたのよ」
と自信満々に言い放った。
 唖然とするジョゼット達を他所に、ナタリアの暴走は止まらない。
「さあ、アスター殿のところに行きますわよ」
と来たもんだ。呆れて物が言えなくなるとは、このことを云うのか。
「ナタリア姫、公務はどうされた。今日は、福祉施設の慰問ではありませんでしたか?」
「問題ありません。別の日に伺いますわ。急ぎの公務も片付けてきましたのよ」
「陛下は、ご存知なのですか?」
「書き置きしてきたから大事ですわ。心配性ですわね」
 胸を張って宣うナタリアに対し、溜め息しか出なかった。
 王族にしか出来ない公務もあると云うのに、ナタリアは反省どころか自分の行動は正しいと云わんばかりの態度を取る。
 何ヵ月も掛けて慰問を依頼し待ち望む民の努力を我儘のせいで先延ばしにする身勝手さ。
 王族を軽視している彼女に失望した。
「……ジョゼット。キムラスカ領事館に行って、ナタリア姫がケセドニアに来ている為、迎えを寄越すように話を着けてきてくれ。マリアは、ナタリア姫の宿の手配を頼む」
 これ以上話しても時間の無駄と判断した私は、ジョゼットとマリアに指示を飛ばす。
 無表情なジョゼットと対象的に嫌そうに歪めた顔でナタリアを見るマリア。
 分からなくもしないが、不敬罪になりかねないマリアを視線でたしなめた。
「分かりました」
 物凄く不機嫌な声で是と答えたマリアは、一礼するとそそくさとその場を離れた。
「私は、ルーク様の護衛です。お側を離れるわけには参りません」
「ガイが居るから大丈夫です」
「ガイにお二人を同時にお守りするには少々不安があります。彼に行かせましょう」
 ジョゼットだと顔パスで話もつけやすいかと思ったのだが、護衛の面に不安が募ると言われてしまえばぐうの音も出ない。私、ハッキリ言って弱いしね。
 守られるて当たり前とは言わないが、多少なりと護身術や譜術の一つでも覚えるべきなのだろうか。
「じゃあ、ガイお願いします。一応、これを持って行って下さい。身分証明くらにはなるでしょう。私達は、ナタリア姫を宿にお連れします」
 クリムゾンが何処かの宝石商に作らせた(私をイメージしたらしい)薔薇を象った指輪を渡すと、彼はショックを隠し切れず涙を流していた。
「ガイ、その指輪に涙をつけたらしばきますよ。泣いている暇があったらとっとと行く。ジョゼットに負担を掛ける気ですか」
「……はい」
 泣く泣くその場を離れたガイを見送り、私は引きつった笑みを浮かべ有無を言わさずナタリアを宿へと連行したのだった。

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