小説 | ナノ

14.獲物が掛かるの早すぎやしませんか [ 15/48 ]


 本当に神童と謳われたんですか? と思わず隣にいたマリアに聞きそうになった私は、絶対悪くぬぇぇぇええ!!
 出るわ出るわ罵詈雑言の嵐。ND2018、ルークが鉱山に出向き超振動を使い一帯を崩落させることがキムラスカの繁栄が読まれているとヴァンが言ったらしい。
 人様の秘予言、それも国家機密に相当することを高々主席総長が知っているのだ。
 アッシュ曰く『誘拐』らしいが、特務師団長の座に就いておきながら、どう考えても亡命したんじゃねーの? と突っ込まれてもおかしくない状況だ。
 記憶もない性別も違う私よりも、早々にアッシュが『俺はルークだ』と名乗り上げれば誰もが信じただろう。記憶があるんだから。
 四年の月日は、野生の赤鶏に変貌させるには十分な時間だったようだ。
 殺気立つマリア達を宥めるのに苦労した。隣の部屋から飛ばされている殺気に気付かず、機嫌よくベラベラ内情を喋り捲るアッシュを呪ったことか。
 これが、素になったのかと思うと色々と残念でならない。
 アッシュの処遇は、クリムゾンとシュザンヌの二人に決めて貰うとして、そろそろ引き上げさせないと私一人では彼らを押さえ込むのは難しいなと思っていた矢先、ジュディがタイミングよく話を切り上げお開きとしたのだった。
 こうして、目的が果たされめでたしめでたし……と言うわけにはいかなかった。
 ダアトから戻ってきたら、目の下に隈をつけたガイが仁王立ちで出迎えてくれました。
「ただいま、ガイ」
「お帰りなさいませ、ルル様」
 ドスの効いた声に、相当怒っているなと苦笑いを零す。ススッとマリアの後ろに非難し耳を塞ぐと、お説教タイムが始まった。
「ダアトから無事お戻りになられて何よりですが、どこぞの馬の骨とも知れぬ輩の面を拝みたいだけで出かけられるのは如何なものでしょうか。奥様、旦那様の反対を押し切っただけでなく陛下にも脅しを掛けたそうですね。未婚の女性がフラフラと出歩いて良いわけないでしょう! 第一、貴女の護衛である私を置いていくとはどういう了見ですか? 軍職についているわけではありませんので、確かに腕は彼らよりも劣るかもしれませんが、私はルル様の護衛なのですよ。護衛対象が傍に居ない護衛剣士なんてありえません」
 浪々と流れるお叱りは、要約すると『何で自分を置いてきぼりにしたこの野郎』と言ったところか。
「連れて行こうにもガイ居なかったじゃない」
「貴女が、シェリダンへ遣いに出したからでしょうが!」
 グワッと目を吊り上げて怒る姿を心底うざいと思いつつも、ここでメッコメコに凹ませると更にうざい事になりかねないので別の話を振った。
「適材適所だと判断した上で使いを頼んだんです。例の物は作れそうですか?」
「はい、三月あれば試作品が出来るだろうとのことです」
 渋い顔はされたものの、ガイは使用人然とした態度でシェリダンでのお使いの結果を報告した。
「それから、前々から仰られていたタイプライターの試作品が完成したとのことで貰い受けてきました。お部屋に置いてあります」
「え、本気(マジ)で!? うっはー、これで書類作成の効率が上がる」
 思わず素で万歳と喜んでいたら、
「「「ルル様!」」」
 ガイを含めマリア達に窘められた。化けの皮が剥がれた私を見ていたジョゼットと彼女の部下はポカンとした顔をしていたのはここだけの話である。

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