小説 | ナノ

15.瘴気ダダ漏れで怖いです [ 16/48 ]


 ダアトから帰還した私は、早速アッシュことオリジナル・ルークについて報告したら、ファブレ夫妻の背後から瘴気が見えた。
「ルル、それは本当ですの?」
「はい、私はルーク・フォン・ファブレのレプリカドールだそうです」
 採取した唾液から検出された音素固有振動の書類を彼らの前に差出し、肉声が録音されたテープを再生してみせた。
 徐々に般若と化すファブレ夫妻だったが、何を思ったのかニッコリとそれは素晴らしく良い笑顔を浮かべて言った。
「失踪宣告は、確か7年でしたわね」
「ああ、そうだったな。3年後に、失踪宣告を陛下に上訴しよう。死を恐れ逃げ出した国家反逆者の居場所など用意する必要もなかろう」
「勿論ですわ。それに、キムラスカはルルが居れば十分ですもの」
「そうだな」
 ウフフ、オホホなツンドラ並に寒々しい会話を肩身の狭い思いで聞いていたが、重要なことを思い出した。
「でも、17歳に死ぬと予言されてますよ」
 私の一言に、面白いくらいに固まってくれた二人を見てこっそりと溜め息を漏らした。
 予言万歳な痛い世界で王族として生き延びても、それはそれで面倒くさい。人生の途中でリタイアしても良いかなと考えていたら、それを察知した彼等は必死の形相で掴み掛かってきた。
「ルルを手放すくらいなら、予言など滅びてしまえば良いのです!」
「お前が居なくなったら、誰がキムラスカ経済を支えるのだ!_!」
 シュザンヌはともかく、クリムゾンは思いきり私情が混じっている。
「父様が、何とかして下さい」
 ナタリアは論外だし、インゴベルト六世は役立たず。クリムゾンは、インゴベルト六世に比べればマシだがキムラスカを発展させる程のアイディアマンではない。
 精々、現状維持が精一杯だろう。残るはシュザンヌだが、唯一期待できそうな人物ではあるが病弱体身体を考えると厳しいものがある。
「無理だ! お前のような、奇抜極まりないアイデアが浮かぶわけがない。それに、国民から絶大な支持を持つお前が預言で死んだとなれば暴動が起きる」
 力強く断言するクリムゾンに、シュザンヌは同意するかのように力強く頷いている。
「元は、アッシュに読まれた予言です。ルルが身代わりになる必要はありません」
「シュザンヌの云うとおりだ。出奔した反逆者に相応しい末路だろう」
 高笑いするファブレ夫妻を見て、ちょっぴりアッシュに同情した。ここ数年、はっちゃけ具合が良い感じになってきているファブレ家についていけない。
 メイド達が居たら、『ルル様の影響です』と言われただろうが、当の本人である私は気付きもしなかった。

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