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9.ラスボスの根城に侵入しましょう [ 10/48 ]


 私、二十歳になるまで外出禁止なんていう傍迷惑極まりない勅命が下っていた事実を今更ながら知って吃驚です。
 スーパー過保護な夫妻の仕業だと思っていたのに、インゴベルト六世も一枚噛んでいたとは。
 視察の仕事が入らないと思っていたら、そいうことだったのか。過去を振り返り納得しつつも、政をする上で視察は大事である。
 自慢じゃないが、地球で育った知識をフル活用した技術を普及させて大きな経済効果をたたき出しているわけで、政務者ルーク・フォン・ファブレとしての発言権はそれなりに力はあるのだ。
 『ダアトに行かせてくれないと、仕事やんないぞ』的な内容の手紙をインゴベルト六世に送りつけて外出許可をもぎ取った。
 ファブレの名前でダアトをうろつくのは宜しくない。と言うのも、誘拐犯の根城へ探りに行くのだ。用心するに越したことは無い。
「やっぱり偽名か」
 偽名と聞いてギョッと顔を強張らせたラムダスに、ファブレの分家に連なる家名の偽造旅券を入手してくるように指示を出すと物言いた気な視線をくれたが無視した。
 説明しなくても聡い彼のことだから理解しているだろう。
「過保護は伝染するものなのでしょうか」
 溜息を一つ吐いて出て行った彼を見送った私は、思わず零した本音にダメージを受けるというお馬鹿なことをしてしまったのだった。


 ガイの帰還を待つことなく、私は少数のメイドと護衛を引きつれダアトに来ていた。
 初めは、メイドや護衛合わせて30人以上と言う大人数で送り出そうとしたシュザンヌとクリムゾンに出発前だと言うのに心労で倒れるかと思った。
 隠密行動なのだから少人数で良いのだと諭すこと3日間、私付きのメイド2人とクリムゾンの部下であるジョゼット・セシル大佐と彼女の部下2名、白光騎士団から腕の立つ中堅が2名、案内兼私の補佐役でジュディ先生の計9名で旅立った。
 当初の三分の一の人数ではあるが、私はやはり多いと不満が募るも弱いのでこれ以上は文句は言うまい。
「改めてルル・フォン・ファブレです。この度は、私の我侭でつき合わせることになってしまい申し訳ないが、少しの間よろしくお願いします。セシル大佐、ニック大尉、ロンメル中尉」
 スカートの裾を摘み軽く膝を折り淑女然とした挨拶をすると、ホゥッと溜息が漏れた。
「ルル様、勿体ないお言葉です。道中精一杯お守りいたします」
 ジョゼットは兎も角、ニックとロンメルは自分達の名前まで呼ばれるとは思わなかったのか恐縮している。新鮮な反応に私は思わず笑みが零れた。
「少し硬いですね。貴族の令嬢がお忍びでダアトに観光旅行がコンセプトなんですから。慰安旅行と思って楽しんで下さいね」
 ニッコリと笑みを浮かべて言ったら、ポッカーンと呆気に取られた顔をしている。
 うーん、美人さんの呆れ顔も絵になるもんだ。彼女等の肩を慰めるように叩いている白光騎士やメイドは見なかったことにしよう。

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