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6.魂は純地球産ですから [ 7/48 ]


 身体はオールドラント産ですが、私の魂は純地球産なんです。学力水準の高い国でそれなりの教育を受けていたこともあり、この世界の知識も難なく頭に詰め込む事が出来たのは幸いだ。
 しかし、解せないのは『予言』が大切にされて生活と密接に関わっているということだ。
 簡単な公務に就ける程度には知識を得た私は、書類を裁きながらキムラスカの国庫がヤバイことに気付いた。
「予言に払う金があるなら、食料自給率を上げるために農地改革する方が先決でしょうに」
 ボソッと悪態を吐く私に、家庭教師が深く頷いていた。
「全くその通りです、と云いたいところですが、キムラスカの領地は痩せた土地が殆どを占めるため作物も実りにくいのですよ」
「それ言い訳になってません。痩せた土地でも栽培できる野菜を開発研究するべきです。今やキムラスカの食料自給率は10%を切りました。これで戦争が起きて長引けば確実に内部から崩れますね」
「……」
「それに、貧困の差が激し過ぎます。日々の生活に喘ぐ者達がどれほどいるでしょうか。綺麗な服を着て美味しいものを食べられるのは、ほんの一握りの人間だけです。私達を支えてくれる民にちゃんと形あるもので還元しませんと、首チョンパになりかねませんよ」
「……」
 冷や汗を垂れ流す家庭教師に、私はダメ出しに言った。
「そうですねぇ。いきなり予言を宛にするなと言ったところで聞く耳持たないでしょうから、予言を読んだ場合は読まれた譜石も提出することにしましょう。譜石無しの場合は、経費では落ちなくすればいい。また不必要に読んだ予言も同様にしましょう。無駄の一割が削減できますよ」
 ハハハハッと高らかに笑う私に、家庭教師は何とも形容しがたい顔をしていた。
「ああ、そうです。この案を議会に提出する際、元老院は無視して結構です。予言を信じてない方々に根回しして可決しておいて下さいね」
 無茶とも言える私の注文に家庭教師は、胃を押さえていたがそしらぬ顔をしサクサクと別の書類に取り掛かったのだった。

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