小説 | ナノ

2012Xmas 前編 [ 8/11 ]


 十二月二十四日に近付くにつれ、子供達がソワソワし始める。と云うのも、リクオが幼稚園でクリスマスを知り、それを桜達に教えたのだ。
「かーたん、サンタさんくりゅかなぁ」
「いい子のところには来るわよ」
「かしゅみ、いーこだもん!」
 ニパァと笑みを浮かべながら良い子だと言い切る霞に、雪羅が通りすがりにボソリと突っ込みを入れた。
「あんた、今日の朝も人参嫌いって言って鯉伴に食わせてたでしょう」
「にゃっ! ……ううっ、りはんたんがいいっていったもん」
「好き嫌いする子のところに来るかねぇ」
 ニヤニヤと意地悪く笑う雪麗に対し、霞は耳をペタリと折り落ち込んでいる。
「これから好き嫌いせずに食べれたら来てくれるわ」
「ほんと?」
「本当よ」
 パァッと顔を明るくし、人参食べる!と意気込む霞に私は笑みを深めた。余程嬉しいのか、ブンブンと尻尾を激しく動かしている。
 サンタが来ると分かって安心したのか、霞は外へ遊びに行って来ると部屋を飛び出し行ってしまった。
「本当チビ共には甘いわね」
「躾は、ちゃんとしてますよ。それで、首尾はどうですか?」
 チクチクと縫い物を再開しながら雪麗に問い掛けると、彼女は懐から取り出したメモ用紙を捲りながら言った。
「桜はテディ・ベアの等身大人形で、九重がエプロン。あんたのお手伝いするために、自分のエプロンが欲しいらしいわよ。霞は、お菓子のお家が欲しいって言ってたわね」
「フフフ、あの子達らしいわね」
 クスクスと笑みを浮かべながら、彼らの欲しがる物に笑みが零れて仕方がない。
「桜と九重は兎も角、霞のリクエストにどうやって答えるつもりよ。お菓子の家なんて無理よ」
 眉間に皺を寄せながら作れないと断言する雪麗に、私は縫い物をしていた手を止め、一冊の本を見せた。
「……あんた、最初からこれ作る気だったんじゃないの? 私が、チビ共に聞かなくても良かったじゃない」
「霞は、多分お菓子だろうなぁって予測はしてたんですよ。あの子、食い意地張ってるし。桜と霞は、女の子らしいものを希望すると予測してたんですけどね。具体的に何が欲しいかまでは分からなくて困っていたのも事実なんですよ」
「なるほどね」
 呆れた顔で私を見る雪麗の視線が痛い。どうせ親馬鹿と思っているのだろう。
「リクオ様は、どうでしたか?」
「あのガキ、本当マセてるわ。藍が欲しいってさ」
「……」
 ぬらりひょんや鯉伴が聞いたら性懲りもなく嫉妬心丸出しでリクオと張り合おうとするだろう。頭の痛くなるプレゼントに顔が引きつった。
「それ以外には何か云ってませんでしたか?」
「そうね。玩具は直ぐ飽きるみたいだけど、戦隊モノのショーとかは好きみたいよ」
と雪麗に云われ、私はこの辺りで戦隊モノのショーをしているところがあったかなと首を傾げたのだった。

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