小説 | ナノ

2012Xams 中編 [ 9/11 ]


 クリスマス前日、クリスマス会の準備を邪魔する鯉伴あしらいながらクリスマスプレゼントを子供達に見つからない場所に隠して欲しいと頼んだら見返りを求められた。
「キスですか」
「キスだぜ」
 ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべる鯉伴に、キスだけで終わらないだろうと心の中で突っ込みを入れてしまった。
 思いっきり溜息が漏れてしまい、鯉伴が拗ねたように口を尖らせた。
「良いだろう。最近、あいつらのぷれぜんとを用意するからっつて、全然構ってくれねぇじゃねーか」
「うっ……そうですけど」
「ここんところ、ずっと一人寝だったんだぜ。そろそろ、俺にも構ってくれても良いだろう」
 いつの間に背中に回ったのか、後ろから抱きすくめるように腕を腰に回される。
 顎を持ち上げられ唇が重なると思ったところで、鯉伴の頭が横へとずれた。
「なーに、ワシの藍にちょっかい出しとんじゃ。このクソ餓鬼」
「何しやがるクソ親父!! 藍は、俺の嫁だ」
「ワシの嫁に四百年前から決まっておるわ。さっさと放さんか」
 鯉伴から奪い取るように引っ張られ、私はそのままぬらりひょんの腕の中にすっぽりと納まってしまう。
 いつの間にか勝手に嫁扱いされ、逃げられないように外堀を埋めてくる二人に私は溜息が漏れた。
「二人とも、お願いですから邪魔しないで下さい」
 ただでさえ時間が迫っているのに、馬鹿二人の相手などしてられないと彼らを睨むが、当の本人はどこ吹く風である。
「ここ数日藍に触れられず、欲求不満なんじゃぞ」
「禁欲生活が続くなんて真っ平ゴメンだぜ」
「禁欲って……高々一週間一緒に寝なかっただけじゃないですか!」
「「一週間も我慢できるか!」」
 異口同音で返された本音に、私は眉間に出来た深い皺を揉み解しながら言った。
「いい加減にして下さーい!」
 ビシ・バシッと二人の頭を叩き台所から叩き出したのだったが、それが後に緒を引き影響することになろうとは思いもしなかった。


 普段食卓に上がらない豪勢なオードブルと洋酒、そして巨大なクリスマスケーキは子供達だけでなく妖怪達にも大人気だったようで甚く喜ばれた。
 サンタクロースを一目見ようと起きている子供達を宥めすかして寝かせるのにいつも以上に時間が掛かったのは云うまでもなく、さあプレゼントを配ろうかという時に問題が発生した。
「藍が、プレゼントを配るの?」
「私が配っているところを見られたら元も子もありませんから、鯉伴様かぬらりひょん様にお願いしようと思ったんですけど。二人とも臍を曲げてしまって隠れしまって捕まらないんです」
 無駄に畏れを使い尚且つ気配を絶たれてしまっているため、幾ら私でも彼らの居場所を特定することは出来ない。
「臍曲げたって、あんた一体何したのよ」
「昼間にキスを強請られて、二人言い争いを始めたので怒ったんです」
 雪麗の質問に真面目に答えたのに、返ってきたのは呆れた視線と大きな溜息だった。
「あいつらも心底馬鹿だと思うけど、藍も拗ねるの分かってるんだからキスの一つや二つしてやれば良かったじゃないの」
「したら、絶対止まりませんよ。台所で押し倒されるなんて嫌です」
「……仕方ないわねぇ。私が、ひと肌脱いで上げるわよ」
 フフフと含み笑いを浮かべながら私の手をガシッと掴んだかと思うと、ズリズリと引きずられた先は雪麗の部屋だった。

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