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妖怪の大将、嫁捜索に乗り出す。 [ 92/259 ]


 ぬらりひょんが、妖狩りから戻ってきたら大声を張り上げて藍を探す桜と九重の姿があった。
「あーん、あーん…ママァー」
「ふぇぇえん…かーしゃまどこぉー」
 唖然とする下僕を他所に、ぬらりひょんはただ事ではないと察し、彼女たちの元へと駆け寄る。
「一体何があったんじゃ?」
「ママが、どっかいっちゃった」
 ボロボロと涙を零しながら藍がいないとしきりに訴える桜に、ぬらりひょんは眉を潜める。
 夜に、子供達を置いて藍が出かけるとは考えにくい。
「瑞は、いつまで一緒におった?」
「かーしゃま、とーしゃまにいってらっしゃいするまでいたの」
 傍にいた小妖怪に視線を移すと、
「総大将を見送りした時までは一緒でした。瑞姫が門を閉めるため、俺達を中に入れて……その後姿を消しました」
 小妖怪は、青ざめながらその時の状況を説明した。
「瑞が居ないことに気付かなかったのか?」
 ぬらりひょんの纏う空気が重くなる。畏れを撒き散らす総大将に、力の弱い下僕達は身体を震わせている。
「直ぐ気付き、交代で辺りを探しています。瑞姫が消えたのをいち早く気付いた猫又が、屋敷を飛び出しました。奴は、瑞姫を追っているのではないかと……」
「そうか。……九重、桜、瑞を連れ戻しに行ってくる。泣かずに良い子で待ってられるな?」
 膝を折り桜たちと目線を合わせると、ぬらりひょんは言い聞かせるように言葉を選ぶ。
「ママかえってくりゅ?」
「ああ、帰ってくる」
「とーしゃま……かーしゃまは、あたちたちのことがきらいになったの?」
「それはないぞ。悪い奴に攫われたんじゃ。助けに行かねばならん。お前達は危ないから、ここで大人しく待っておれ」
 ポンポンと二人の頭を軽く撫でると、彼女達はぬらりひょんにギューッと抱き付きベソをかきながら無事で帰ってきてと願った。
「雪羅、こいつらを頼む。ワシは、藍を探してくる」
「分かった。でも、闇雲に探しても意味はないんじゃないの?」
「心配するな。京で起きたことなら、大抵のことは分かる奴がいる。そいつのところへ行って、瑞の居場所を聞き出す」
 雪羅の言葉に、ぬらりひょんは当てがあるのか心配ないと言いきり屋敷を後にした。

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