小説 | ナノ

君シリーズ,10 [ 76/145 ]

君慕う

「ん……」
 もぞりと寝返りを打とうとすると、ギュッと抱きしめられ動けない。
 ぼんやりとした頭で何故と考えても原因が思い当たらず、目を開けると鯉伴の顔が近くにあり驚いた。
「キャーッ!!」
 邸を揺るがす大きな悲鳴を上げた佐久穂は、状況が飲み込めずグルグルと目を回している。
 佐久穂の悲鳴で叩き起こされた鯉伴は、フワァと大きな欠伸を一つ噛み殺し身体を起こした。
「な、なんで……」
「何でって、そりゃあ……」
 鯉伴の言葉を遮りスパンッと襖が開き、下僕達が転がり込んできた。
「佐久穂様、如何なさいま…し…」
 飛び込んできた下僕達の視線が、何故か佐久穂の胸に集中している。彼女は視線を下ろし、絶叫した。
「イヤァァアーッ!!」
 白い柔肌には、赤い痕が転々と散らばっている。全裸の状態であることに気付いた彼女は、慌てて布団を掴み身体を隠した。
「テメェら、覚悟は出来てんだろうなぁ」
 ニッコリと黒い笑みを浮かべ佐久穂を隠すように立ちはだかる鯉伴もまた全裸だ。
 何から考えれば良いのか混乱した佐久穂は、目を回し気絶したのだった。


 佐久穂が、気絶から回復し目を覚ました時の光景は正に地獄絵図と言っても過言ではなかった。
 鯉伴に手加減なく叩きのめされた下僕達が、そこかしこに転がっている。
「あの、これは……?」
「気にすんな。仕置きしただけだ。死んじゃいねーよ」
 下僕を殺したら不味いだろうにと視線だけで訴えてみるが、彼は何処吹く風で聞き流している。
 彼の表情が、いつもより柔らかいことに気付き何か良いことでもあったのだろうか。
「鯉伴さん」
「ん? どうした」
「昨日……いえ、何でもないです。それより、大切な話があるので時間頂けませんか?」
 朝の情景からして、佐久穂は鯉伴に抱かれたのだろう。
 雪麗と飲んだ後の記憶がサッパリなく、良い夢を見たのは何となく覚えている。
 今更自ら恥を掘り返したところで抱かれた事実は変わらないし、失態も消えてなくなるわけでもない。
「構わねぇが、離縁の話なら聞く気はねぇからな」
「え…どうして…」
 佐久穂の言いたいことが分かっているのか、鯉伴は離縁について話し合いする気はないと釘を刺してくる。
「昨日のこと覚えてねぇのかい。相当酔っ払っていたから、まあ記憶を飛ばしててもおかしくはないが」
「昨日?」
「そう、昨日。あんたは、夢だと思ってたみたいだが生憎夢で終わらせてやれるほど俺は優しくないんでね」
 そこまで言われて佐久穂の顔から色が消えた。真っ白になった顔色に、鯉伴は彼女が誤解しているのを感じ取る。
「佐久穂、俺はあんたを愛してる。あんたと結婚したことを後悔したのは、あんたから笑顔が消えちまったからだ。無理矢理抱いて嫁にした。欲しくて欲しくて堪らなかった。あんな事をした後だ。あんたが、俺を怖がるのは無理ない。触れることが出来ず、ただ発散するために外で女を抱いたこともある」
「鯉伴さん……」
「日に日に枯れた花のように元気を無くしていく佐久穂を見るのが辛かった。本心を聞いた後で、あんたの手を放してやることなんて出来やしない。一生涯、あんただけしか抱かない。愛するって誓う。だから、あんたの心ごと俺にくれねぇか」
 鯉伴の言葉に、佐久穂は戸惑った。ぬらりくらりと交わしてきた彼は、決して嘘は吐かない妖怪でもあった。
 本当に自分だけを愛せるのか、その言葉を後悔しないのか。不安で仕方がない。
「本当に、私だけを愛してくれますか?」
「嗚呼、勿論だ」
「浮気したら許しませんから」
「応」
 佐久穂は、涙交じりに鯉伴を睨みつけ彼の腕の中へ飛び込んだ。
 奴良組に新たな風が吹き込むのは、気持ちが通じ合って二月が過ぎた頃の事である。
 三代目懐妊の話で、奴良組の下僕達が沸いたのは又別のお話。





素敵ネタ提供ありがとう御座いました。
神様と人の混血主人公で書かせて頂きました。
がっつりシリアス(笑)
拉致監禁してませんが、強姦⇒嫁という流れに変更して書いてます。
二代目の暴走&ヘタレっぷりは書いていて楽しかったです、ハイ。
両思いになった後の夢主は、大変だろうなと妄想したり。
今まで外で発散していたのが、全部夢主に向かうので受け止めきれないんじゃないかと……。
妊娠した後浮気するんじゃと心配があるかもしれませんが、妊娠したことで過保護になり逆に鬱陶しいくらい張り付いていれば良いよ。
妊娠中でも触りっことかしてそう。つーか、させそう。
「それが普通なんだ。お袋もそうだった」とか何とか言って夢主を丸め込めば尚良いよ。
又ネタが浮かんだら提供して下さいませ。

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