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act85 [ 86/199 ]


 島に『覗き厳禁・やったら殺す』と脅しつきで、女子の部屋を監視させる。
 リクオは、妖怪の血が騒ぐのか夜の姿へと変わり邪魅が出るのを待っている。
「島、そっちの様子はどうだ?」
『ガガッ……及川さんは大丈夫っすよ』
「誰が、及川のことを聞いた。女子の部屋に異常はないかっつてんだ。このボケェ! たく、お前のそのストーカー的変態思考は何とかならんのか」
『ひ、酷いっす』
「酷くねぇ! つーか、昨日みたいに女子の部屋に入って痴漢行為働いたら簀巻きにして庭の木に吊るすぞ」
『りょ、了解っす』
 やる気があるのか無いのか、今一使えない男・島二郎。調子の良い返事に一抹の不安を覚えつつも、時刻が午前一時を指したのを見計らいブチッと無線を切った。
「そろそろ、動き出すころだな」
 品子に何かあったら無線を使えと、リクオにパチられた清継人形無線機を渡してある。
 彼女からのSOSが入るのを待つこと十分。案の定と言うべきか、彼女から無線が入る。
「品子、大丈夫か?」
『ヒッ…いやぁぁあ!! 貰った札がお化けに変わったの! 部屋も開かなくて、助けて!!』
「落ち着け。お前の腕を掴んだ妖怪はいるか?」
「居る! いや、イヤァァアアッー!!! お化けが襲ってくるぅぅぅうう」
 ドサッと床に叩きつけられたような音が聞こえてくる。品子は、錯乱状態に陥っている。
「今、そっちに行く。品子の腕を掴んだ奴は、お前を守る存在だ。そいつから離れるな」
『え?』
 私は、無線を繋げっ放しにしながら品子の部屋へと向かった。
 品子の部屋には、リクオの姿があり彼も邪魅の妖気を感じて出てきたのだろう。
「あのインチキ神主の野郎、ご丁寧に結界なんて張ってやがる。お前なら、破れるだろう」
「誰に言ってんだい。俺は、ぬらりひょんだぜ」
 音を立てず部屋の中へと消えていったリクオに、私は流石花開秀元の結界札さえもすり抜ける特技に感嘆する。
 が、リクオが部屋に入った数秒後に勢い良く襖がぶっ壊れた。スラッと抜かれた祢々切丸の刀身が剥き出しになっているのを見て、私はハァと溜息を吐く。
「何やってんだお前は」
「こいつが、いきなり切りかかってきたんだよ」
 品子を狙う敵と誤認したのか。部屋の中を見ると、破れた札が、品子の周りに落ちていた。
「清継君、これは……?」
「百聞は一見にしかず。今回の邪魅騒動のカラクリを暴くから来てくんねぇかな。邪魅、あんたもだ」
「邪魅を暴くのは俺だけで十分だろう」
 私が同行するのに納得いかないのか、ムッとした顔で文句を垂れるリクオに私は肩を竦める。
「嗚呼、そうだろうな」
「だったら、何でオメェが行く必要があるんだい」
「あのインチキ神主は、天に唾を吐いた。やっちゃあいけねぇ事をしたんだ。それに、花開院の顔に泥を塗った。真相を暴き、相応の報いを受けさせねぇと気がすまん」
「……勝手にしろ」
 私に何を言っても無駄と悟ったリクオは、クルッと背を向け屋敷の塀を飛び越えた。
「俺らも行くか」
 私は、品子の手を取り玄関から外に出る。邪魅が、付かず離れずの距離で追いかけて来るのを感じながら元凶である秀島神社へと足を進めた。

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