小説 | ナノ

act86 [ 87/199 ]


「迷信を利用してボロ儲け。これほど美味い商売はないな」
 ゲヘヘと下品な笑い声が、神社の境内から聞こえてくる。
 聞き耳を立てずとも中の会話が丸き声とは、どれだけ大きな声で話しているんだ。
「清継く……」
「シッ、気付かれる。黙ってれば、奴らがボロを出す」
 品子の唇に指を当て言葉を遮り、中の様子に聞き耳を立てる。
「漸く、菅沼家の土地も手に入る」
「ホント馬鹿ですよねー。ここの住人は! 邪魅なんて信じやがって、お陰でこっちは商売繁盛だぜ」
「どーします? ラブホ街にしますか?」
「邪魅って居ないんすか?」
「ハセベ、おめぇは相変わらず頭が悪いなぁ。強いて言うならオレらが飛ばしていた式神こそ邪魅よ。なあ、神主さん」
「くくく、昔京で習った式神がこんな風に大金を生むとは。この件が上手くいけば……」
「分かってますって先生。7:3の割合で勉強させて貰います」
「あの娘の家だけは手こずったが、今日張った札が命取りになるとは思っても見なかっただろう。逃げることも助けを呼ぶこともできず一晩中恐怖し死ぬのだから」
「神主さんこそ本物の悪ですなぁ」
「いやいや、集英建設さんの方ですよ」
 ウフフ、アハハと高笑いする姿に我慢できなくなった品子が、境内の扉を開いた。
「神主さん、一体どういうこと? 何で、その人たちと一緒に居るの」
 怒りを抑えきれないのか、声が震えている。
「誤解だよ、品子ちゃん。ダメじゃにか、ちゃんと結界に入ってなきゃ」
 取り繕うように笑うその顔は醜悪だ。
「近寄るな! おかしいと思ったのよっ!! やっぱり、あんた達がグルになってやってたんでしょう」
 ヒステリーを起こす品子に対し、神主は態度を豹変させる。
「知ってしまったのなら、口封じをしないとねぇ」
 神主の言葉に、チンピラ集団が品子に近寄る。
「俺さぁ、言ったよな。生き地獄を見るか、豚箱に突っ込まれるかどっちが良いって。それ以上、品子に近寄ったら身の保証は出来ないぜ」
 品子を背に庇いながら、嫣然と笑みを浮かべてチンピラを睨みつける。
「ハッ、ガキに何が出来るってんだ」
「俺がするんじゃねぇよ。なぁ、闇の主さんよ」
 私の呼びかけに、暗闇からリクオの声が聞こえてくる。
「外道共が、邪魅祓いとは笑わせる」
「誰だ!」
「何処に居る!?」
 姿を見せない相手に、チンピラ共はザワつく。直ぐ傍にいるというのに、馬鹿である。
「テメェらの云うことを聞かねぇ人間には式紙を飛ばし、やれ邪魅がついたと触れ回る。邪魅に呪われた。邪魅を祓えと人々を惑わせる。ハッ、なんてことはねぇ。邪魅騒動は、自作自演の猿芝居。悪鬼なるべしだ」
 長ったらしい口上に私は欠伸を噛み殺す。
「誰だぁぁあ! どこにいる!! 出てきやがれ」
 チン毛男と称されたハセベが、がなり立てる。多少霊感があるだけでは、夜のリクオを視界に捉えることは出来ないようだ。
「テメェの目の前にいんだろう」
 私の声と共に、姿を意図的に現したリクオは祢々切丸をハセベの首に当てていた。
「ひぃぃぃいいっ」
 ハセベの可愛くない悲鳴と、殺ってしまえと物騒な声が次々と上がる。命知らずな。
 リクオは、無言で大黒柱を切り倒した。メキメキと天井が崩れ落ちていく。
「品子、ここは危ないから外に出てろ」
「清継くんも危ないよ!」
「俺は、あのインチキ神主に用があんだ。用が終わったら逃げる。早く行け」
 品子を外へ非難させる。

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