小説 | ナノ

act84 [ 85/199 ]


「暴くといってもどうやってするんですか?」
 ポソポソと小声で質問する氷麗に、私はニヤリと良い笑顔を浮かべつつリクオを指した。
「そりゃ、こいつの出番でしょう」
「「は?」」
「それとなーく、あのインチキ神主から『強力な札』を手に入れれば良いだけだから」
「どうやって手に入れるんだよ」
 半眼になり私を睨むリクオに、私は無茶振りで嗾ける。
「持ち前の強かな図々しさで何とかしろ」
「……僕をどう見ているのか、よく分かる一言だよね」
 毒オーラを纏い始めたリクオに、私は動じることなくシレッと宣う。
「本当のことじゃねーか。つーか、そのくらい強かじゃねーと三代目になれねぇと俺は思うけどな」
 私の一言に、リクオの毒オーラが一瞬でなりを顰めた。暗に三代目を認めたような言葉に気を良くしたのか、いつになくやる気に満ちている。
 そんな私達のやり取りを見つめていた氷麗は関心したように、
「……リクオ様を操縦するなんて凄いです」
と嬉しくない感想を呟いていたなど気付かなかった。


 清十字怪奇探偵団+品子一行は、昼食を取った後もう一度秀島神社を訪れていた。
「何あのヤクザ達!! マジでむかつくんだけど! あのチン毛みたいな頭してさー」
 ダンッと机を叩きながらヒートアップしている巻に、私は顔を顰める。
「お前なぁ、放送禁止用語を使うな。下品だぞ」
「ホントのことじゃん!! 絶対アイツら怪しいって」
 ギャオゥと吼える巻に、何を言っても無駄かと口を噤む。
「あの人たちは、邪魅が出たと言われている家を安く買い取っているブローカーなの」
 品子の言葉に、私はある仮説を立てる。神主とブローカーが手を組んでいたとするなら、あり得ない話ではない。
 巻の言葉が、この事件の核心をついた。
「やっぱアイツらが、犯人じゃん!」
「え? 犯人!?」
 唐突な彼女の言葉に、ついていけないのか周囲は唖然としている。
「きっとチン毛ヤクザが、邪魅を操って目ぼしい家を襲わせているのよ」
「な、なるほど……」
「妖怪っていうこと聞くものなのかな?」
 カナの疑問は尤もで、神主が冷や汗を垂らしながら否定している。
「うーん、そのような妖を人が使うことはないと思うが」
「神主さん!」
「は?」
「何か方法はないんでしょうか?僕ら品子さんを守りたいんです。邪魅に触れられたり……このままじゃあ急がないと」
 自分のペースに巻き込み、不安を煽り緊迫している状況を瞬時で作り出している。流石、奴の孫。食えない狸である。
「何言ってんの。この人の御札は効かないじゃん!」
 鳥居の突っ込みに、私が口を挟む。
「このおっさんに頼むより、ジイさんの知り合いの花開院さんに札書いてもらった方が早くないか?」
「そうそう。良いこと言うじゃん清継君!」
 揺さぶりをかければ、奴はあっさりと嵌ってくれる。
「………仕方がありませんね。実は、20年前にも邪魅に取り殺された事件があったんです。その時の京より取寄せた奥の手があります」
 重厚そうな木箱の蓋を開け取り出したのは四枚の御札。よく見ると、20年前と言っているが最近書かれたものだ。
「この札は、強力な護符です。部屋の四方に貼り外には出ないこと。勿論、部屋の中に入るのは品子ちゃんだけです。本当は使いたくなかったのですが、品子ちゃんのためです。差し上げましょう」
 雰囲気に呑まれ固唾を呑むメンバーを他所に、私は冷ややかに神主を見ていた。
 札は手に入った。後は、奴が仕掛けてくるのを逆手に取り邪魅騒動のからくりを暴くだけとなった。

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