小説 | ナノ

act83 [ 84/199 ]


 神社から出た私達は、無言で街をブラブラする。その間、無言である。
 手がかりらしい手がかりが得られなかったのは痛かった。
 街を歩いていると、遠巻きに私達を見てはボソボソと話している。その内容は、邪魅に憑かれたことに対する嫌悪だ。
 井戸端会議をしているおばさんらと目が合い、ニッコリと笑ってやると頬を赤く染めている。
「悪意が透けて見えるぜ、おばさん」
 私の毒舌に固まるおばさん共に溜飲を下る。
「品子ちゃん、気にしちゃダメ!!」
「品子ちゃんが悪いわけじゃないんだし」
 品子の隣を歩いていた巻と鳥居がフォローを入れる。でも、彼女の纏う空気は重い。
 全体的に良くない空気になりつつあるのを感じた私は、一つ提案をした。
「よし、気晴らしに海へ行こう!」
「え? どうしたんすか、清継君??」
 突拍子もない私の提案に、皆一同唖然としている。他よりも復活が早かった島が、彼らを代表して聞いてきた。
「気分を晴らすにゃ海が一番! シケタ面下げて作戦練っても良いもん出ねぇよ。この際、パーッと海で遊ぼうぜ」
「ナイスアイディアだよ、清継君!」
「やったー! 海だぁああ!! よっ、男前」
「そうと決まれば、一度戻らないと」
 一気にテンションが上がった巻と鳥居に、私は苦笑を浮かべる。
 まさか、そんなことで喜ばれるとは思わなかった。
 私達は、品子の家へと戻り海に入る準備をしたのだった。


 水着着用、浮き輪装備でいざ出陣したまでは良かったのだが、私としたことがウッカリしていた。
「ぎょせん……!?」
「しまった!! ここが、カニの産地だとは知らなかった」
 ぬか喜びさせた手前、巻と鳥居を見るのが怖い。
「きーよーつーぐーくぅぅぅううん」
 ゴゴゴッとどす黒い怨念のようなものが、彼女達から噴出していて滅茶苦茶怖い。
「どーいうことよぉぉおお! 折角の海で泳げると思ってたのに」
「水着まで持ってきたのに」
 海で泳げなかったことがショックなのか、ブーイングが飛んだ。
「す、すまん」
「すまんじゃ、ないよ! 楽しみにしてたんだからね」
 完全に拗ねてしまった二人に、私は冷や汗を掻く。
「この埋め合わせは別でするから、な?」
 そこまで言うと、やかましかった口がピタリと閉じる。
「ほんと?」
「ああ、男に二言はねぇ。海でも山でも好きなところに連れてってやる」
 自棄ぱっちに叫べば、彼女達は溜飲を下げたようでそれで手を打つと偉そうなことを宣った。
 その光景を見ていた品子が、クツリと笑みを浮かべていた。
「ありがとう。元気、出たよ」
「へ? どうして??」
 元気付けるようなことわけではないから、余計に彼女の言葉が気になったのかカナが首を傾げた。
「みんなが、来てくれた。それだけで心強いの……。邪魅がいる家は、あまり良く思われないから……みんなみたいな仲間がいるって事が私は嬉しいの」
「まだ、何もしてないですけどね」
 氷麗の冷静な突っ込みに、私は確かにと頷く。
「ここにいる全員で品子を守る。大丈夫だ」
 ポンッと彼女の頭を軽く撫でていた時だった。聞き覚えのある声に、眉が寄る。
「ナイト気取りかい。熱いねぇ。でもよー、命が惜しけりゃバケモン憑きのそいつに関わらない方が良いぜ」
 昨日リクオにぶつかってきたチンピラ達が、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「菅沼のおじょーちゃん、こんなところに居たんかい。家誰もいなかったから探したぜ」
「ヒヒヒッ、やばいことになる前に早くこの街から出た方が良いぜ」
 三流でも使わないような在り来たりの脅迫に、私は白い目で彼らを見る。
「あんたらさ……生き地獄を見るか、豚箱にぶち込まれるかどっちが良い?」
 スッと目を細め言うと、私の顔を見てヒッと悲鳴を上げ逃げた。
 脱兎の如く走り去る姿に首を傾げ振り向くと、私の後ろにリクオが居てその肩には『毒汁』と書かれた蛇が顔を出している。
「なるほどね」
 リクオに畏れをなしたか。しかし、また妖怪を肩に乗っけて気付いてないなんて鈍いぞ
リクオ。
「奴良、及川、今夜奴らは現れる。邪魅の正体を暴くぞ」
 リクオも何か感づいたのか頷いた。氷麗はというと、状況が今一分かっていないのか目をパチクリしていた。

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