小説 | ナノ

act80 [ 81/199 ]


 朝食の後、人型の札を置いていた部屋へを調べたが損傷はないことに気付く。
「やっぱ、気のせいだったのか?」
 札を仕舞う私に対し、リクオが声を掛けてきた。
「もう、皆出かける準備が出来てるよ」
「嗚呼、今行く」
 部屋を出ようとした私に、リクオが腕を掴み止める。
「何だ」
「昨日、廊下に邪魅とは別のものが出たんだ。そいつ、この部屋を目指していた。祢々切丸で切ったら札に変わったんだ」
 破れた札を差し出され、私をそれを手に取る。それは、神主から貰った札だった。
 私の仮説は、正しかったらしい。胸糞悪くなる現実に眉を潜めるも、分からないことが一つある。
 邪魅にかこつけ、品子を襲う理由が分からないのだ。
「……きな臭いな」
 取敢えず破れた札は写メを取り、秋房のところに送りつける。即返事をしろと厳命つきで飛ばしたので、遅くても今日中には連絡が来るだろう。
「あの神主から情報を引き出すか」
「そうだね」
 私達は、秀島神社で邪魅について聞き込みをすることにした。


 邪魅落としの看板が目に付く神社は、立派に見えるが神気は欠片も感じられない。
 由緒ある土地ならば神格の高い神が存在するのだが、そうでなくとも土地神や氏神がおり祭られているはずなのにそれすらも感じられない。
「立派な神社だね」
「社はな」
 眉間に皺を寄せながら吐き捨てる私の態度に、驚いたのかカナは目を丸くしている。
「清継君が、そんなことを言うなんて珍しいね」
「本当のことだからな」
 信仰が神通力を強化するのは、苔姫や千羽で証明されているし、事実私も苔姫の加護を受けている。
 秀島神社は、祭る神すらいない明らかに中身のないスカスカ神社である。
「やあ、よく来たね」
 タイミングが良いのか悪いのか、事務所から出てきた神主に声を掛けられた。
「「「こんにちは」」」
 愛想良く挨拶をする清十字怪奇探偵団のメンバーに紛れて私は挨拶すらしなかった。
「今日は、どうしたんだい」
「邪魅について聞きに来ました」
「その様子だと昨日も出たみたいだね。良いよ。ここでは何だから事務所で話そうか」
 神主は、私達を事務所の中へと勧めてくれた。

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