小説 | ナノ
act79 [ 80/199 ]
野郎共は見張りで、女性陣は品子と一緒の部屋で就寝……のはずが、何故私まで一緒の部屋に居るんだ。おかしいだろう。
「お前ら、俺の性別間違えてんのか。ああ”?」
眉間に皺を刻みながら、いそいそと布団を引く女子を睨みつける。
「柄が悪いよ、清継君」
「清継君が、その辺の男よりも漢前だってことは分かってますから」
「そーそー、良いじゃない。男の子なんだから守ってよ」
上から家長、氷麗、巻ときた。私が、生前彼女達と同じ年頃だった時、間違っても男にそんなこと頼んだことはない。
「お前らには危機感ってものが備わってないのか!!」
ギャースッと怒鳴りつけるが、右から左に聞き流される。
「あるよ。でもさ、清継君は絶対女の子を傷つけるようなことしない」
鳥居の言葉に、云々と深く頷く清十字怪奇探偵団メンバーたち。
頼みの綱は品子だけだと思い彼女に目を向けるが、
「清継君、ごめんね」
困ったような顔で謝る彼女の手には枕があり有無を言わさず手渡された。
ガックリと肩を落とした私に、勝利した彼女達は早速誰の隣で寝るのか決めている。
私の意見を聞いてくれよ、と心の中で愚痴を零すも、私の周りに話を聞いてくれる奴なんて居なかった事実にまた凹んだのだった。
リクオと島に外を見張らせ、私は中で見張り番をすることとなった。ご丁寧に布団を敷かれている。
最後まで一緒に寝ようだのなんだの煩かったが、旅の疲れもあってか零時を回る頃には寝息が聞こえてくるようになった。
話し相手もおらず壁に背を預けながらウトウトしていると、リクオの声が聞こえてくる。
「いたっ……島君、後ろ!!」
「え…えーっ!! なにぃぃー、どこだ?」
「島君は、部屋を見ていて」
バタバタと慌しい足音を立て遠ざかっていく。
それと同時に、濃厚な妖気が部屋を包み目を開くと品子の枕元に邪魅が現れた。
スッと刀を抜き辺りを警戒している邪魅に私は訝しむ。その仕草は、まるで何かから品子を守ろうとしているようにも見える。
「お……」
声を掛けようとしたその時だった。スパーンッと開いた襖に、ビクッと私は身体を揺らす。
大声を張り上げながら島が飛び込んできた。
「どこだ妖怪ぃぃぃいい!!」
「ヒィィィイイイッ!!!」
カナの悲鳴が上がり、部屋の中は騒然となる。
「何よ。誰か入ってきたの?」
「ブッ。何これ邪魔!」
起き出した巻が、カチッと電気を付けると彼女の胸に顔を埋める島が居た。
「入ってくんなつったろーが、ド島よぉぉおお!」
綺麗な一本背負いが決まり、私は思わずパチパチと手を叩いてしまった。哀れ島、変態のレッテルを貼られ気絶している。
「清継君も、何で変態島を部屋の中に入れるのよ! 乳揉まれたじゃんかー」
怒りの矛先は何故か私に移り、巻がギャンギャンと吼える。
「俺は関係ないだろうが! こいつが、勝手に入ってきたんだ」
「言い分け無用! 私をちゃんと守って!」
私達(複数形)ではなく、私と言っちゃう辺り巻らしい。
「一本背負い決めるくらい強ぇんだから、島くらい自分で何とかしろ。俺は、妖怪からお前ら守るのに手いっぱいだ」
キッパリ断言すると、巻はキーキーッと発狂している。嗚呼、本当五月蝿いな。
「な、何かあったの?」
状況についていけない品子は、オロオロと私達を見ている。言い合いもヒートアップしそうになったその時、カナの搾り出すような声が部屋の空気を変えたのだった。
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