小説 | ナノ

act78 [ 79/199 ]


 脱衣所に入ると、リクオはまだ中に居るようだ。
「いつまで入ってんだ。さっさと出ろ」
 ガラッと浴室のドアを開けば、平然とした顔で湯船に浸かるリクオが居た。
「一緒に入ろうよ」
 嫌な予感的中!! 一緒に入る気満々で風呂場に居座っていたのかコイツは。
 顔を引きつらせる私に、リクオはニヤッと嫌な笑みを浮かべて言った。
「それとも一緒に入れない理由でもある、とか?」
 感づいているー! 冷や汗がダラダラと流れる。誤魔化そうかと考えたが、ぬらりひょん同様食えない奴だ。そう簡単に誤魔化されてくれる相手ではない。
「最近、何かと理由をつけて夜の僕から逃げるよね」
 ザブンと湯船から上がったリクオが、ヒタヒタと私のところまで歩いてくる。
 後ずさるも、逆に壁際に追い詰められ逃げられない。
「大人しく一緒にお風呂に入るか、無理矢理服を剥ぎ取られて風呂に入るかどっちが良い? 因みに後者なら容赦なく襲うから」
 ニッコリと笑いながら吐く台詞じゃない。抵抗して襲われるなら、羞恥はあれど言質をとって身の安全を確保する方が賢明だ。
「大人しく一緒に入るから、絶対手を出すなよ」
「念押ししなくても、流石に他人の家で致す気はないよ」
 シレッと返された言葉ほど信用ならないと思うのは、これまでの彼の行い故だろう。
「本当に本当だな? 手ぇ出したら……あること無いこと及川や家長にチクッてやる!」
 そして嫌われてしまえ、とは言うまいが本心だ。
「どんだけ信用ないんだ」
「日ごろの行いです」
 キパッと断言してやると、彼は渋面を作った。
「はいはい、手は出しません」
 両手を挙げ降伏宣言をしたリクオに、私は漸く服に手を掛けた。
 Tシャツを脱ぎ捨て、中に着ていたベストを脱ぐ。明らかに男の身体にはないものがついている。
 小ぶりの胸が二つ現れ、それをガン見するリクオに私は大きな溜息を吐いた。
「だから嫌だったんだ……」
 急速に女の機能が発達し始め、身体付きは丸くなり胸が出て腰に括れができている。
「……本物?」
 固まっていたリクオは、何を思ったのかいきなり人の胸を鷲掴み揉み始めた。
「ギャーッ、何さらすんじゃ己はっ!!!」
 ムギュッと強く揉まれたせいで、滅茶苦茶痛い。胸が張っているのか、ちょっとの刺激でも痛く感じるのだ。
 無理矢理引き剥がしリクオから距離を取る。奴は、手をジッと眺めながら放心している。
 私に胸ができたことが、相当衝撃的だったようだ。
 リクオが復活する前に、身体と頭を洗って逃げるしかない。
 私は、烏の行水よろしく3分で頭と髪を洗うという偉業を達成し復活する前に逃げ切ることに成功したのだった。

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