小説 | ナノ

act62 [ 63/199 ]


 鴆に渇を入れられたリクオは、百鬼を率いて四国妖怪を迎え撃った。
 死闘は、明け方まで続き無事退けることが出来た。
 かくいう彼は、ズタボロで生還したわけだが寝ているのが嫌なのかジタバタと暴れている。
「離してってば! これから学校に行くんだから」
「ちょっ、若ダメですってば! 休んで下さい」
「いや、行くから! 今日は、花壇の水遣りしなきゃいけないんだよ」
 小妖怪を腰にへばりつかせながら、部屋から出ようとするリクオに皆止めるのに必死である。
「何言ってるんですか! あれだけ切り刻まれておいて、安静にして下さい」
 氷麗の怒声もなんのその。聞く耳を持たないリクオだったが、ガラリと障子が開いたかと思うとゲシッと顔面を蹴り飛ばされていた。
「この怪我人が、世話焼かせんじゃねーよ。このスットコドッコイ! 包帯で縛り上げて、簀巻きにして転がすぞコラ」
 蹴り倒されたリクオは、布団に逆戻りしている。
「僕、縛られるなら縛りたいんだけど」
 サラリと零された変態発言に慣れてきた私は、綺麗な笑みを浮かべて言ってやる。
「そうかそうかSMプレイがしたいのか。鴆、相手してやってくれ。包帯でグルグル巻きにして簀巻きにした後、外に吊るしてやれ。後で、ささ美に鞭を借りてきてやろう」
「すみませんでした」
 リクオは、顔をザッと青ざめ早々に謝罪をしてくる。その様子を見て、私は溜飲をさげた。
「牛頭丸、馬頭丸具合はどうだ?」
「大分良くなった」
「何かいつもと違って治りが早いんだよ! 凄くない?」
 もう傷が塞がりかかっているのか、彼らは元気だ。私は、ここにいる理由も無くなったし帰ろうと腰を上げると服を掴まれていたせいでビタンと畳とキスする羽目になった。
「……何しやがる」
「え? いや、どこ行くのかなって」
 無意識だったのか、ポリポリと頬を掻くリクオに私は呆れた顔で彼を見る。
「帰るに決まってんだろう。こっちは徹夜してんだ。テメェも、朝方までチャンバラやってたんだろうが。さっさと寝ろ」
「えー、居てくれても良いじゃん。寧ろ、泊まってけば?」
 リクオとぬらりひょんが居なければ考えるが、やつ等が居る前で無防備に寝ていられるか、と心の中で毒づく。
「何で俺が……」
「そうですよ! そうしましょう。寝てないなら、一緒に寝ちゃって下さい」
「いや、それは遠慮した……」
「あ、お布団引きますね」
 私の言葉をまたも遮り、ご丁寧にリクオと牛頭丸の間に布団を引いてくれた。
「男の川の字……ムサッ!」
 何を想像したのか、顔を顰めてむさ苦しいと喚く鴆に一人逃げられると思うなといわんばかりにガシッと奴の着流しを掴んだ。
「テメェも道連れだ。雪女、悪いが鴆の布団も用意してくれ。具合が悪くなったってよ」
「はぁーい、清継君」
 氷麗のいい返事を聞いた私は、ニヤリと人の食った笑みを浮かべると盛大に顔を顰められた。
「何で俺までこのむさ苦しい野郎共の中で寝なきゃなんねーんだよ!」
「俺一人嫌な思いをしてたまるか!」
「冗談じゃねーよ!!」
 ギャーギャーと喚く鴆を交えて、私は強制的にリクオの家にもう一泊することとなったのだった。

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