小説 | ナノ

act36 [ 37/199 ]


 ぬらりひょんは酒を嗜みながら、私はお茶を飲みつつ料理を突付く。
 あまり食事を多く取る方ではないのだが、化猫屋の料理は美味しくついつい何時も以上に食べていた。
「ふぅ、美味しかった」
「ここの飯は、美味いと定評があるからのぉ」
「へー、そうなんだ。連れて来てくれてありがとうな」
「別に礼を言われることじゃねぇ。まあ、飯代は別でキッチリ取り立てるから安心しろ」
「奢りじゃねーのかよ!」
 思わず入れた突っ込みに、ぬらりひょんはシレッとした顔で宣った。
「誰も奢るとは言っとらんぞ」
 何て阿漕な。そう思わずにはいられなかったが、ぬらりひょんの言っていることは最もなので私は財布の中身を確認する。
「……(やばい。足りないかも?)」
 普段からお金は必要最低限しか持ち歩かないせいか、財布の中には野口英世が1枚と守礼門が1枚と中学生にしては十分な金額だろうが、飲み食いの代金を払う分には到底達してないだろう。
 私は、ぬらりひょんとご飯を食べる時は福澤諭吉を用意しておこうと心に誓った。
「安心しろ。ガキに払わせようなんざぁ思ってねーよ」
「あんたに借り作った方が怖ぇーよ」
 思わず零れた本音に、ぬらりひょんの眉がピクリと上がる。もしかして、地雷を踏んだかもしれない。
 ただでさえ、あまり機嫌が宜しくない。その上、更に機嫌が悪くなったとしたら何されるか分かったもんじゃない。
「じゃあ、しっかり取り立ててやるよ」
 ニヤッと嫌な笑みを浮かべるぬらりひょんに、私は逃げの体制を取るが彼の方が動くのが早かった。あっと言う間に押し倒され馬乗りされる。
「お前からするリクオの匂いを消すだけにしてやろうと思っていたが気が変わった。どこで何をしていてもワシが分かるようにしてやる」
 唇が触れるか触れないかのギリギリのところで物騒なことを宣ったぬらりひょんは、私の静止を無視し服を剥ぎ取った。
 ひんやりとした手が、肌の上を滑る。冷たさに眉を潜め上がりそうになった声を根性で押し留める。
「何じゃつまらん。声を上げれば可愛げがあるものを」
 小馬鹿にしたようなぬらりひょんの態度に私はカッとなり怒鳴りつける。
「黙れ妖怪!」
「合っているが、情緒がないのぉ。ワシの名前を呼んでみろ」
 唇に触れた指をガブッと容赦なく噛んでやる。
「っ…じゃじゃ馬じゃのぉ」
 噛んだ場所から奴の血が零れる。ざまあみろと思っていたのも束の間、ぬらりひょんの血を嚥下した私の体に異変が起こった。
 ジワジワと競りあがる燻るような熱に、私は呼吸を乱した。ぬらりひょんは、そんな私の姿を見て喉の奥で笑いを噛み殺している。
「あ、はっ…ぅ…んん」
 体のラインを確かめるように触れてくる指に、私は身を捩り甘やかな苦痛から逃れようとするが力で押し留められる。
「リクオと違いワシの血は、純粋に妖怪の血じゃからな。人間には、毒になる。鴆のように猛毒を身に宿すやつもいれば、相手を魅了するための催淫剤の役割を持つものもいる。ワシの場合は、後者じゃな」
「さ…い、あ…く…」
 自分の血をわざと飲ませるなんて最低だ。噛み付いた私にも非はあるが、ぬらりひょんのことだ。なんらかの形で血を飲ませようとしただろう。
「妖怪にとっては、最高の褒め言葉じゃな」
 カラカラと笑うぬらりひょんを睨みつけるが、効果はない。逆に、奴の欲を煽るだけだった。
「ワシに身を任せろ。そうすりゃ、快楽だけくれてやる」
 初心者に対して言う言葉ではないだろう。私は、冗談じゃないとぬらりひょんの顔を引っ叩いてやった。
 力の入らない手で叩いたが、ぬらりひょんには拒絶と捉えたのか獰猛な笑みと共に乱暴に私を組み敷いた。

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