小説 | ナノ

act25 [ 26/199 ]


 食事を終え他愛もない話をし風呂に入り就寝する。生憎、就寝具が必要最低限しかないので必然的にリクオは私のベッドで一緒に寝ることとなった。
 セミダブルでお互い小柄なせいか二人並んでも余裕がある。最初は渋ったリクオだが、問答無用でベッドに引っ張り込み就寝すると暫く葛藤した後、大人しく寝ている。
「おーおー、健やかな顔して寝ちゃって。可愛いねぇ」
 プニプニの頬を突付きながらクツリと笑みを浮かべる私だったが、一瞬視界が揺らいだかと思うとリクオの姿が変わっていた。
「随分と積極的じゃねぇか」
 私の手を掴み、押し倒される。体を入れ替えられ私は仰向けになりリクオを見上げた。
「可愛げが無くなった。残念」
「んなもん要らねーよ」
 ケッと吐き捨てるリクオに私は、本当に可愛げがないと残念に思う。傍若無人・唯我独尊…そんな四文字熟語が頭を過ぎる。
「俺、男に押し倒される趣味はねーんだが」
「俺もないぜ」
 ニヤッと笑うリクオに、この状態で言っても説得力がないと思うのは私だけだろうか。
「まさか、出てくるとは思ってもみなかった」
 夜のリクオが、自在に出てこれるのは四国八十八鬼夜行との決戦以降のはずだ。そう踏んで一緒に寝たのに嵌められた!
「あんたに聞きたいことがあったんだよ」
 物凄く嫌な予感に襲われ無視しようとしたら、唇がくっつくんじゃないかと思うくらい顔を近付けて奴は言った。
「苔姫は、あんたの事を佐久穂と呼んだ。どういう事だ?」
 バッチリ聞いていたのか。昼のリクオは口にしなかったから、てっきり聞いてないものだと思っていたのに迂闊だった。
「さあ、何のことやら」
「すっ呆けても無駄だぜ。こっちは、バッチリ聞いてんだ。無理矢理吐かせるぞ」
 極悪な笑みを浮かべて宣うリクオに、私はヒクッと顔を引きつらせる。
 夜のリクオは、他人の秘密を暴きたがるやつのようだ。
「佐久穂、俺の真名だよ。無闇に口に出すな」
「女みてぇな名前だな」
 元が女なのだ。仕方が無いだろう。
「うるさい。答えたんだ。俺の上から退け」
 リクオの肩を押そうとしたら、逆に体を抱き込まれる。顎を持ち上げられたかと思うと、近かった顔が余計に近くなった。
 重なった唇に驚くが、相手は自分のしたいように舌を捻じ込み絡めてくる。
「んっ…ぁふ…ん、はふ…。ちょっ…んんっ」
 罵声を浴びせようにも、キスを一向に止めようとしないリクオに私はバンバンと彼の背中を叩いた。思いっきり手加減無しでだ。
 流石に痛かったのか、漸くキスを止めたリクオは金色の目を鋭くし私を睨みつける。
「痛ぇじゃねーか」
「こっちは、酸欠で苦しいわっ!」
 ゼィゼィと荒く深呼吸を繰り返す私に、リクオはクツリと笑みを浮かべる。
「気持ち良かっただろう?」
 どこから来るんだろうか、その自信は。そう思いたくなる彼の満面の笑みに毒気を抜かれた。
 そりゃ、他の男から言い寄られたら嫌悪感でどうにかなりそうだ。
 ぬらりひょんといい、リクオといい嫌悪感が少ないのはありがたいが、人の道を踏み外した人生を歩みたくない。
「いくら気持ち良くても男は嫌だ。するなら女が良い」
 あまり深く考えずに言った言葉が、リクオの闘争心に火をつけてしまったようで、そこからはキスの嵐だった。
「ぅ…ん…ふぅ……」
 キスだけでは飽き足らず、パジャマの裾から手を差し込み体を撫で回すのは止めて欲しい。
 気持ち良いのか、それともこそばゆいのかどっちなのか判断つかない。許容範囲を超えた私の頭は飽和状態で、酸欠に陥った私はビクッビクッと体を痙攣させ気を失った。
「ん? 佐久穂? おい……気絶してやがる。やり過ぎたか」
 クッタリと意識を飛ばした私をリクオがバツ悪い顔で抱きしめていたなど知る由も無い。
 ペッティングされたことで中途半端に高まった体は、後日『欲求不満』を抱えて悶々とする嵌めになるのだった。

*prevhome#next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -