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act20 [ 21/199 ]


「へへ、久しぶりの出入りじゃぁ」
「暴れるぞ」
 突如現れた百鬼夜行に、慌てる旧鼠とその部下は滑稽に思えた。
「せ、星矢さぁ〜ん」
 何とも情けない声を出す部下に、リクオが堂々とした面構えで旧鼠を挑発する。
「待たせたな、ねずみども」
「テメェ何者だ?」
「本家の奴らだな……」
「三代目はどうした?」
 本家の妖怪だと分かっているなら、言葉にする必要はないだろう。私の上に乗り掛かっていた鼠も、体を起こしいきり立っている。
 意識がリクオ達に集中している隙に逃げようとしたが、ガシッと腕を掴まれて逃げることも適わない。
「逃がすわけねぇだろう」
 チッと舌打ちをしどうやって隙を作るか頭をフル回転させる。
 ゲージの外では、回状だなんだと鼠が喚いているが当のリクオは淡々とした表情で破いたと宣った。
「んだとぉぉお!!」
「てめぇーふざけんなよ」
 馬鹿にされたと思ったのか、今にも襲い掛かりそうな勢いの鼠達を尻目に助けはすぐそこまで来ていた。
 首なしの紐がゲージをすり抜けゆらとカナの体を引っ張り上げている。
「ならば約束通り殺すまでよ」
 ゲージを叩きながら格好付ける旧鼠に、私はクツリと笑みを零す。チョキチョキと蟹の鋏を持った妖怪がゲージを壊し、更にそこから青田坊が力技でゲージを壊し彼女らを助けた。
「アレーッ!?」
 頭が弱すぎる間抜けな鼠に、リクオは余裕の表情を浮かべて言った。
「どうする夜の帝王。人質が逃げちまったぜ」
 クツクツと笑う姿は様になっており、思わず見惚れてしまった。
「チッ……まだ、人質は居るんだよ」
 旧鼠の前に引っ張りだされた私を見て、リクオは驚いたように目を丸くした。そりゃ驚くか。なんせ、奴らの影に隠れて見えなかったのだから。
 一気に形成逆転したと思っている旧鼠に、私は壮絶な笑みを浮かべ思いっきり股間に蹴りを炸裂させた。
「女に手ぇ上げるたぁ万死に値する。キッチリあの世で女の扱い勉強してこいや」
 急所を蹴り上げられ掴んでいた腕が離れる。隙を見て距離を取ろうとしたが失敗した。髪を掴まれて逃げ果せられなかった。
「このガキッ! 殺す殺す殺す殺す」
「やれるものならやってみろよ」
 ザシュッと音を立てて私の髪を掴んでいた旧鼠の手が切り落とされる。
 グイッと腕を引っ張られポスンッとリクオの腕の中に納まる。
「ったく、気が強ぇのは分かったから大人しくしてくれ」
 呆れた顔で私を見るリクオに、キッと睨み反す。リクオが、さっさと百鬼夜行を率いて来てれば私が頑張らなくて済んだのだ。
「首、あいつらにやられたのかい?」
 ダラダラと流れる血に、今更ながらに傷が結構深いことに気づく。旧鼠との片が付いた後が大変そうだ。
「鼠に噛まれたんだよ」
 止血しようにもハンカチを持ち合わせてない。気絶させられた時に、髪紐と一緒に荷物もどっかへ行ってしまったのだ。
 リクオは、ゴソゴソと袖から手拭を差し出し私の首に当てた。
「それで押さえて下がってろ。後は、俺が仇を取ってやる」
「清継君、こちらへ」
 雪女もとい氷麗に手を引かれ後ろへ下げられる。ちょっと待って。これじゃあ……。
「舐めやがってっ……こうなったら皆殺しだ!」
 やっぱりーっ!! 旧鼠の一言で抗争状態になる。力の差は歴然であっと言う間に片が付いたのだけど、本気で怖い。何で私、妖怪の中にいるの?
「何で…てめぇら……誰の命令で動いている? 百鬼夜行は主しか動かせねぇーんじゃぁ…」
 明らかに劣勢になったことで急に気弱になる旧鼠を良太猫が心底馬鹿にしたように言った。
「何言ってんだ。目の前に居るじゃねーか」
「まさか……そんな…」
「このお方こそ、ぬらりひょんの孫。妖怪の総大将になる方だ!」
 リクオの覚醒時の姿を知らなかったが故の敗北。こうなるだろうと、シナリオを考えた牛鬼は策士だ。
「やっぱりあんとき殺しておけば良かった!!!!」
「追い詰められて牙を出したか。だが、大した牙じゃないようだ」
 醜悪な鼠の姿へと変貌した旧鼠に、リクオは恐れることもなく淡々とした顔で懐に手を入れたかと思うと直径50センチ程の大盃を取り出し技を放った。
「てめぇらが向けた牙の先、闇の帝王になりてーなら歯牙にもかけちゃぁならねぇ奴らだよ。おめぇらは……俺の下に居る資格もねぇ。奥義“明鏡止水・桜”」
「な、なんじゃこりゃーっ!?」
 旧鼠の体を炎が包みこむ。技の美しさも去ることながら、酒の入った盃を取出したあの懐一体どうなっているのだろう?
「その波紋、鳴り止むまで全てを燃やし続けるぞ。夜明けとともに塵となれ」

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