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幾つ月日が流れてもB [ 74/218 ]


「あー、藍さんだ
 ぬらりひょんと一緒に散歩をしていると、ヒシッと抱きついてくるカナに私は苦笑した。
「カナちゃん、久しぶり」
「うん」
 ニコォと嬉しそうに笑うカナに、私は可愛いなぁと思っていると隣で不貞腐れる男が一名いた。
「嬢ちゃん、そろそろ離れてくれんかのぉ。ワシらもう家に帰るでな」
 ヒクヒクと顔を引きつらせるぬらりひょんも、随分大人になったもんだ。昔なら、問答無用で一刀両断して追い払っていたのに。
「あのね、藍さんにこれあげる」
 ぬらりひょんの言葉をサラッと無視したカナは、頬を赤く染めながらモジモジと箱を差し出してきた。
 そこには、St.Valentineのシールが貼ってある。ああ、もうそんな季節か。
「ありがとうカナちゃん。ホワイトデー楽しみにしててね」
「うん! カナ、藍さんとお出かけしたいなぁ」
 ニコニコと笑うカナの可愛らしさにやられた私は、思わずギューッと抱きしめていた。どうにも可愛いものに弱いみたいです。
「何やってるんですか!! 藍さ、んから離れなさい家長カナ!」
 突如現れた氷麗に、カナと引き剥がされてちょっぴり残念と思っていたら、今度は氷麗が抱きついてきた。
「何するのよ!」
「それは、こっちの台詞です!! 藍さんに気安く触らないで下さい」
 いがみ合う二人をリクオが呆れた顔で諌めた。
「もお、二人とも止めなよ。ば……藍さんが、困ってるだろう」
 リクオったら、思いっきりばあちゃんと言いそうになったな。
 ぬらりひょんのように若い姿から老いた姿へ認識を変えさせることなど出来ないため、周りにはリクオの従姉妹という事になっている。
「せやで、藍さん困ってるやん。ほんま、往来で何しとんの(恥ずかしいな)」
 白い目で氷麗とカナを一瞥したゆらは、ニッコリと可愛い笑みを浮かべて用意していた札を手渡した。
「チョコレートやないけど、藍さん妖怪に縁あるみたいやしお札にしといた。強い妖怪には利かんけど、嫌がらせ程度にはなるで」
「本当? ありがとう。助かるわ」
 ゆらからお札を受け取った私は、ちらりとぬらりひょんを見ると渋い顔をしている。
 相変わらず二日に一辺は襲ってくるし、丁度いいかもしれない。
「ゆらちゃんも、ホワイトデー楽しみにしててね。お姉さん頑張っちゃう」
「……お姉さんっていう年じゃねぇくせに」
 ボソッと呟かれた悪態をしっかり聞いていた私は、ギューッとぬらりひょんの足を踏みつけてやった。
 痛みに悶絶する彼を無視し、リクオの手を取り帰ろうかと笑う。
「あー、リクオ君ずるいです!! 私も藍さんと手を繋ぎたい」
 空いたもう片方の手をギュッと握り締める氷麗に苦笑を浮かべる。
「リクオ君、邪魔!」
 ドンッとリクオを引き剥がしべったりとくっ付いて来るカナに、ゆらが負け時と背中にくっついてくる。
 物凄く歩きにくい。まるで、400年前を思い出す。
 そんな光景に、男二人は大きなため息を吐いた。
「ばあちゃん、滅茶苦茶女の子にモテてるね」
「言うな……あいつは、そういう奴なんじゃ」
 哀愁漂うぬらりひょんの肩をリクオは無言でポンッと叩く。孫にまで同情をされた彼は、400年前と変わらない光景に大きなため息を吐いたのだった。

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