小説 | ナノ

67.時は遡りアクゼリュス崩落前 [ 68/72 ]


 時を遡ること時間軸はアクゼリュス崩落前。カイツールの関所を強行突破し、アクゼリュスへと向かって旅を続けていた。
「しかし、何だってマルクト軍が俺たちを捕らえようとしているんだ?」
 今も追手がガイ達を探している。隠密行動に長けているわけでもなく堂々と移動する彼ら行動など両国に把握されているとは気付いていないだろう。
「マルクトも一枚岩ではありませんからねぇ。教団みたく和平を望まない者がいると云うことです。しかし、緊急を要したとはいえ少々強引に関所を通ってしまいましたから少々厳しい状況ではありますね」
「それって和平が結ばれないってことですかぁ?」
 眼鏡を押し上げて状況を判断したジェイドに対し、アニスが間延びした口調で問いかけてくる。
「そうです。最悪な事態を想定して、我々は行動をしなければなりません。和平が結べなくともアクゼリュスの住人を救助さえ出来れば問題はありません」
「人命が掛かっているんだ。ナタリアに事情を話せば取り成してくれるさ」
「その時は、お願いします」
 楽観的なガイの言葉を当然と受け入れているジェイドとアニス。それが、どれだけ愚かなのか突っ込める者が此処にはいなかった。
「大佐、アクゼリュスまで後どれくらいですかぁ?」
「デオ峠を越えれば直ぐですよ」
 地図を広げながら、丁度この辺りですと指さした。デオ峠の入り口まで後少しと言ったところだろうか。
「出来ればセントビナーで補給したかったですね」
「マクガヴァン将軍が、トチ狂って私を捕縛しようとするとは予想外でしたからね。念を入れてカイツールの入り口でガイに補給役を買って貰ったのが不幸中の幸いです」
「補給できたと言ってもあまり手に入れられなかったがな」
 大量に買い求めれば怪しまれるのは必至だ。事実、ガイが関所の近くにある宿を訪れた際に不審者を見る目で見られたのだ。
 ジェイドが懸念したように、実際カイツーツまで捕縛の命が通っていたのだ。顔が割れていないガイを行かせて正解だったと言えるだろう。
「最悪、アクゼリュスで調達しましょう」
「それもそうだな」
 ジェイド達は、気を取り直し足を進めたのだった。


 デオ峠を越えアクゼリュスの入り口で、思わぬ人物と遭遇した。
「ナタリア? ナタリアじゃないか!!」
「まあ、ガイではありませんか。どうして貴方がここに?」
 ナタリアは、目を輝かせガイの元へと駆け寄った。行き成り近づかれ思わず後退るガイに慣れているのか、ナタリアは飽きれた顔で溜息を一つ吐いた。
「相変わらずですわね。ファブレのお屋敷を飛び出したと聞いてましたのよ。今までどこで何をしていたのです」
「嗚呼、ルークを探している最中に旦那と出会ったんだ。和平の為にキムラスカへ向かう道中なんだが、行く先々で妨害されてアクゼリュスだけでも救助してやらなきゃと思いカイツールを強引に突破したんだ。ナタリアなら分かってくれるだろう。事情が事情なんだ。陛下へそれとなく口添えして貰えないか?」
 頼むよと両手を目の前で合わせ拝むようなポーズを取るガイに、ナタリアはふぅと溜息を一つ吐いた。
「仕方がありませんわね。わたくしからお父様に口添え致しますわ。ですが、和平の使者とはどういうことですの? 別の方が和平の使者として来てましたのよ」
 ナタリアの言葉にジェイドは眉を顰め、ずり下がってもいない眼鏡を押し上げた。
「どういう事ですか?」
「それはこちらの言葉ですわ。アスラン・フリングスという男が和平の使者として来てましたわ」
「……名代変更の命令は出ていません。親書もここにあります」
 ジェイドが引き起こした愚行の数々が、ティアによって筒抜けになりそれがキムラスカの怒りを買ったのだが、自称天才は気づかない。
「レプリカルークが、その男と共謀してわたくし達を謀ったのですわ! なんて許しがたいことを」
 ナタリアは、忌々し気に吐き捨てた。レプリカという単語に、纏う空気を一変させたジェイドにナタリアは後退した。
「レプリカルークとは一体どういうことです? あれは禁忌として封印したはずです!!」
「ちょ、ちょっと待った! レプリカってなんだ?」
 話についていけないとばかりに口を挟んだガイに、ジェイドは面倒臭そうにレプリカについて説明した。
「フォミクリーと呼ばれる技術によって抜き出した情報をもとにして作られた複製品のことです。人の場合、被験者をオリジナル、複製がレプリカになります」
「ファブレ家に居座っていたルークがレプリカだったのです。オリジナルであるルークは家を追われ名前を奪われ、挙句の果てに捕らえられて牢に入れられておりましたの。わたくしは、不当に捕えられたルークとグランツ総長をお助けしてここまで来ましたんです。レプリカはマルクトを唆してキムラスカを乗っ取るつもりなんですわ」
 信じられないと驚愕するガイに対し、ジェイドはふむと考えるそぶりを見せていた。
「あのぉ〜、アニスちゃん思うんですけどぉ。レプリカルークに考え付かないと思いまぁす。だってあいつバカだしぃ、多分ティアの入れ知恵なんじゃないかなぁ」
「あり得ますね」
「襲撃犯の分際でますます許しがたいですわっ。アクゼリュスの一件が片付いたら、キムラスカへ戻りお父様たちの目を覚まさせなければ!」
「私も協力しましょう。フォミクリーの理論を打ち立てたのは私ですから」
「心強いですわ」
 ガイは、握手を交わしあう二人を複雑そうな目で見ていた。
「ところで、オリジナル・ルークと総長は?」
「嗚呼、二人なら坑道の中に人が残っている方を救助して回ると仰ってましたわ。わたくしも同行を申し出たのですが、瘴気が予想以上に濃いようで危険だと反対されここでお留守番ですわ」
「どうする旦那?」
「人の気配がしないのもおかしい話ですが、ふむ……我々も彼らの後を追いかけましょう。人手が多いに越したことはありません」
 ジェイドの言葉に、納得したのか皆一様に頷き坑道の中へと入って行った。

*prevhome#next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -