小説 | ナノ

68.こうして彼らは生き残る [ 69/72 ]


 坑道の中を進むにつれて瘴気が濃くなっている。町中は人気がなかったが、坑道の中には人が所々倒れていた。
「これは、どういうことですの。アクゼリュスの人々を救助するために救助隊を派遣致しましたのに、救助されてないではありませんか!」
「ええーっ、それってレプリカルークがアクゼリュスの人を見殺しにしたってこと!? さいってー」
 憤るナタリアに便乗するかのようにアニスが声を荒げた。悪い言いながらも、到底恐縮している様子もないガイが、己の主を虚仮おろしている。
「悪いな。ルークは、誘拐がなければ屋敷から出たことがない箱入りなんだ。親善大使なんて言われても、どんなことをすれば良いかなんて分からなかったんだろう」
「ガイ! あれはレプリカですわ」
 すかさずナタリアの叱責が飛ぶが、ガイはハイハイと適当に返している。
「ナタリアが、親善大使だったら良かったのにぃ」
「同感ですね。あの世間知らずのレプリカよりは、王女であるナタリアの方が相応しい」
 アニスの言葉にジェイドが、眼鏡を押し上げ企むような笑みを浮かべてその言葉を肯定した。
 ナタリアはと云うと、満更ではないのか気を良くし笑みを浮かべている。
「わたくしが、ですか?」
「そうだな。ナタリアの方が、親善大使として相応しいんじゃないか」
「ナタリアが、親善大使で決定だね☆」
 アニスの言葉がダメ押しとなり、彼らの中では親善大使=ナタリアの構図が出来たのだが、彼らが世紀の大罪人と指名手配されているなどお気楽な彼らは未だ気付いていなかった。
 親善大使(偽)ご一行は、生きている人は居ないか確認するために坑道の中を探索していたら人工的に掘ったとは言い難い空洞を発見した。
「大佐、なんかこの穴だけおかしくないですかぁ?」
 アニスが指さした先にあるのは、何かで綺麗にくり抜かれた跡があった。火薬やつるはし等で広げられた穴ではなかった。
「まるでそこに在ったものを消し去ったような跡ですね」
「大佐、この先に道が続いていますわ」
「気を付けて下さいよ。この先に何があるか分からないのですから」
「分かってますわ!」
 ジェイドの忠告に、ナタリアは神妙な顔で頷きガイを先頭に立たせアニス・ナタリア・ジェイドの順で隊を組み最下層部へと進んだ。整備された道の先を進むにつれ瘴気は薄れ正常な空気が充満している。
 見たこともない巨大な造形物の前に、人影が二つ立っていた。
「ルーク!!」
「総長もいた!」
 ナタリアが、オリジナル・ルークことアッシュを見つけ駆け寄ろうとした瞬間にそれは起こった。
 アッシュの手から眩い光が放たれた後に、巨大な造形物は一瞬に無に返った。
 直後、地面から巨大な揺れが襲いかかり足場が崩れていく。
「大変です!! このままでは崩落します」
 ジェイドの焦った声が響き渡り、
「譜歌を歌う。皆、こっちへ!」
 ヴァンがすかさずユリアの譜歌を歌った。悪運が強いのか、運よく落ちてきたタルタロスに乗り絶体絶命の危機を乗り切ったのだった。

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