小説 | ナノ

66.それはエサ的な意味で [ 67/72 ]


「やっぱり命は惜しいのかしら?」
「ティア、選択肢与えておいてその言い草はないと思う」
 私の呟きに対し、ルークは呆れた顔で容赦ない突っ込みを入れた。
「世界転覆を狙うなら命を賭す覚悟くらい出来てて当然でしょう」
 痛烈な嫌味は、容赦なくラルゴの心を抉ったようで胸を押さえて呻いている。
「ご主人様、どうしてゴリラは殺さないですの?」
 ミュウが、素朴な疑問とばかりに質問を投げかけてくる。
「毎回行方不明で肝心な時に居ないのよ! 導師のお守がいなくなったらしわ寄せがキムラスカとマルクトに来るじゃない。冗談じゃないわ。面倒臭いっ」
 これ以上仕事を増やしてなるものかとヒスを起こす私に対し、そんな下らないことで命を長らえたラルゴはガックリと肩を落とし、イオンは両手で顔を覆いさめざめと泣いている。
「でも、仔ライガがゴリラ欲しいって言ってますの」
「それはエサ的な意味で?」
「ですの」
「あんなの食べたらお腹を壊すからダメよ。嗚呼、でもラルゴが大きなヘマをしたり私に歯向かったりしたら仔ライガに上げるわ」
 事実上、払下げ許可を出した私に仔ライガは機嫌よくミャーとひと鳴きした。
 ブンブンと尻尾が勢いよく揺れている辺り相当嬉しいらしい。
「って言うわけだから、死にたくなければ必死こいて導師に仕えるのよ」
 高らかに宣言する私に対し、灰になったラルゴを見るに見かねたルークが無言で肩を叩き慰めたのだった。


 ちょっとしたハプニングもあったが、無事ザオ遺跡の調査は粗方終了した。
 私の生体情報が凝縮された素敵な肉塊(レプリカ)が思った以上に役立った。
 砂漠のど真ん中で火を囲み、夕食と云う名の作戦会議をしていた。
「ルークが居ると居ないとでは作業効率が違うわね。髭がパッセージリングを操作することは出来ないから、多少余裕が出来たわ」
「アクゼリュスの二の舞を踏まないために、ツリーを降下させるにしても液状化した大地をなんとかしないことには下ろせないのでは?」
「そこなのよねー。何故大地が液状化したのか。瘴気の発生源は何なのか。根本的な原因を解決しないと意味がないわ。臭いものに蓋ではないけど、その場凌ぎ出来たとしても結局は堂々巡りになるだけだもの」
 原因は知っていてもそれを口にするわけにはいかない。かと言って、動けば不審に思われる。
「教団に残る文献なら何かヒントを得られるかもしれません」
「それならユリアシティも言えることかもしれませんね。本国へ調査隊の増援を要請しましょう」
 イオンの言葉を待ってましたと言わんばかりに、私は調査隊の増援を決める。
「ルーク達は、ディストの部隊と合流して引き続きパッセージリングの操作をお願い。ついでに導師とラルゴをダアトへ送って頂戴。私とセシル将軍は、バチカルへ戻って陛下に中間報告してエンゲーブでヘッドハンティグしてくるわ!」
 拳を突き上げ高らかに宣言する私に対し、面々は何故エンゲーブと首を傾げている。
「普通学者とかじゃないのか?」
「土のスペシャリストは、農家の人が相場よ。毎年変わる気候や温度と上手く付き合いながら美味しい食物を作る彼らが一番土に詳しいわ。部屋にこもりっぱなしの学者より余程頼りがいがあるわよ」
 ドキッパリと断言した内容が単純明快だった為か、すんなりと彼らは納得してくれた。
 翌日、私はルークたちと別れ一足先にバチカルへと戻ったのだった。

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